黒バス×暗殺教室
「みんなー!聞いて聞いてー!」
「今日は触手2本落としたよー!」
高尾と降旗が未だにびちびちと動く触手を抱えて教室に入る。
今日の結果を報告すると、生徒たちから歓声が上がった。
「すげー!」
「マジかよ!」
「ねぇねぇ、どうやったの?」
「えっとねー・・・。」
「光樹君。」
「うひゃあっ!?」
背後から抱きすくめられ、降旗が持っていた触手を落とし、肩を大げさにはねさせた。
視界の端に見えた赤い髪でカルマだとわかり、声をかけた。
「ちょ、カルマ、離してほしいんだけど・・・。」
「どうして?」
「み、みんなに今日の報告しなきゃ・・・。」
「そんなの高尾君にやらせれば?それに報告ならこのままでもできるでしょ?」
「いや、そうなんだけど・・・。」
「じゃあ、キスしてくれたら離してあげるよ。」
「ええ!?」
唐突な要望に狼狽する降旗。
赤くなった頬を見て、初だなぁ、可愛いなぁと思ってしまうのは仕方ない。
優しくしたいけどいじめたい、困らせたい。
それがカルマの矛盾だらけの愛。
赤く染まった頬に口づけたら、どんな反応をするだろう?
降旗の頬に唇を寄せた瞬間、髪にナイフがかすった。
対殺せんせー用のゴムに似た素材のナイフが、深々と黒板に突き刺さる。
「光ちゃんに何してくれてんだ、コラ。嫌がってんだろ、離せよ、カルマ。」
常より幾分か低い声。
表情も「怒り」をかたどったような恐ろしい顔をしている。
殺せんせーのように顔の色が変えられるならば、真っ黒に染まるだろうド怒りだ。
カルマと降旗を引きはがそうと2人に近寄った渚と杉野が全力で後ずさった。
視線、もしくは殺気だけで人が殺せそうだ。
「何で?嫌がってないじゃん。」
「離してっていっただろ、何なの?お前の耳は役立たずなの?」
「ホントに嫌なら無理にでも手を振りほどくでしょ?それをしないってことは別にこのままでもいいかなって思ってるってことじゃない?」
「光ちゃんがそんなことできる子だと思ってんの?優しい光ちゃんが一応友人のカルマにそんなことするわけないじゃん。勘違いも甚だしいんだけど。」
カァン
どこからかゴングの音が聞こえた気がした。
それを皮切りに、取っ組み合いの喧嘩が始める。
降旗をめぐる2人の喧嘩は、毎日のように行われる。
呆れたように溜息をついたり、苦笑して見守ってしまうのは、2人の喧嘩に割って入るすきがないからだ。
この2人が協力すれば、最強とも呼べるタッグが生まれるのに。
「おい、何やってる。」
烏間がガラリと教室の戸をあけた。
その後ろにはイリーナもいる。
「またやってるの?あなた、才能があるんじゃない?私の弟子にならない?」
「弟子にしようとするな、暗殺者としての期間は来年の3月までだ。」
2人のやり取りに降旗が苦笑する。
高尾とカルマには呆れるばかりだが、何やかんやで楽しいと思う。
教師として送り込まれた暗殺者たちとの関わりも、彼らのもたらす衝撃も、このクラスでしか味わえない。
正直に言う、降旗はこのクラスが好きだ。
「あ、そうだ。烏間先生、イリーナ先生!俺、高尾と一緒に殺せんせーの触手2本落としたんです!」
「ああ、見てたぞ。あの奇襲はなかなかよかったぞ、この調子で頑張ってくれ。」
「私も応援してるわ。私をイリーナ先生って呼んでくれるただ1人の生徒だもの。」
教師2人になでられほめられ降旗は嬉しそうに笑う。
喧嘩をしていた2人が教師たちに噛みつくまで、あと少し。
「「あ!先生たち、そこ代われ!!」」
「お前たちが喧嘩を止めたらな。」