緑降異母兄弟パロ






「「いただきます。」」

2人で手をそろえて軽く頭を下げる。彼らの母親は看護師と保育師で帰りが遅い。
2人で食事をとることが多く、今日も2人だけだ。
各々好きなおかずに手を伸ばし、2,3口食べたところで降旗が口を開いた。

「そうだ、真太郎。」
「何だ。」
「俺、バスケ部入ったから。」
「・・・何?」

味噌汁にのばしていた手が止まる。顔を上げ、降旗を見つめる目は鋭く、眉間にはしわが寄っている。

「・・・バスケをするなら秀徳にくればよかったものを。」
「そういうと思ったから黙ってたんだよ。」
「人事を尽くしているとは思えん。」
「・・・秀徳とか、伝統あるところだと、続けていける自信なくて。やるからには3年間頑張りたいし。」
「・・・。」
「俺なりに人事を尽くしたつもり。」

そうか、と小さな声で呟かれる。少し拗ねたような声音に、思わず笑ってしまう。

「・・・そういえば、」
「ん?」
「入った、と過去形だったが、」
「ああ、それ?入部テスト合格したの。」
「テスト?」
「全校の前で自分の目標を宣言したんだよ。」
「宣言?」
「そ。自分の目標を口にして、それを実現させるために頑張るため、だってさ。」

そう言って降旗が煮物を口に運ぶ。やはり少し甘い。
緑間も味噌汁を啜り、チラ、とこちらに視線をよこした。
思わず首をかしげると、緑間が口を開いた。

「で?」
「ん?」
「お前はなんと?」

ああ、なるほど。納得した。彼が視線をよこしたのは続きを促していたのか。
少し間を開け、降旗がに、と笑った。

「『好きな子に何かで一番になったら付き合ってあげると言われたから』」

笑いを含みながら告げると、またしても緑間が動きを止めた。
止めた、というより、硬直してしまっているようだった。
金縛りにあったら、こんな感じになるのだろうか。降旗は他人事のようにそれを見つめた。

「・・・いたのか?」
「何が?」
「『好きな子』というものが。」
「いや?」
「・・・は?」

目を見開き、それこそ呆然とした風に、緑間がたずねた。
それにおどけたように返せば、緑間がハタ、と呆ける。

「ホントは『打倒・緑間真太郎』にしようと思ったんだけど、打倒・キセキの世代を掲げるやつがいたからさ。」
「・・・なら、どこから出てきたんだ、先ほどの宣言は。」
「丁度読んでた本にあったから。」
「・・・そうか。」

呆れたようなほっとしたような、ため息のような言葉に思わず笑ってしまう。
兄弟仲は良い方であると思っていたが、これはもはやブラコンの域にいるのではないか?
自分も大概だと思っていたが、兄はさらにその上を行くらしい。
女の子は可愛いと思うが、別に付き合いたいなどと考えたことはない。
どうやら自分たち兄弟は性欲が薄いらしいことはわかっているはずなのに。
思わず声を出して笑うと、きっちりとテーピングを撒かれた指で額をはじかれた。

「いたい。」
「早く食べろ。冷めてしまうだろう。」
「俺が作ったもんじゃん。」
「そうだったな。」
「・・・おいしい?」
「ああ。」

どうやら、甘い煮物をお気に召したらしい。やっぱり兄は甘党だ。
明日作る予定の卵焼きも、甘くしてやろうか。
再度煮物に延びる箸に、降旗は笑った。











(本当は『打倒・緑間真太郎、-----』の連名を宣言したかったんだけどね。)




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