無意識の誘惑






降旗光樹は、引いては降旗某は、見た目や中身が優れた人間ではなかった。
けれども、彼らとかかわる人間は、彼らを忘れることはできない。
それは、彼らが優れた人間ではないからだ。
優れた人間ではないからこそ、守らねばならない存在なのだと、雄の、雌の本能が告げる。
本能のままに、愛さなければならないという使命感のままに、人々は彼らを愛するのだ。
誰がそう決めたわけでもなく、自分こそが愛さねば、誰が彼らを守るのだ、と、人々は信じている。

でも、これは彼らの無意識化に存在するもの。
だから彼らは、どうしてこうも人々に愛されるのか、わかっていない。
それゆえに、きょとりと首をかしげるその様に、更に愛しさを募らせる。
守らねばと、愛するのだ。
人々の愛を一身に受け、蝶よ花よと称えられ、今日も彼らは愛される。




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