無意識の誘惑






降旗光樹は平凡と自称する少年だった。
しかし、それは自分を卑下しているわけではなく、本当のことだからだ。
何事にもそこそこ打ち込み、それに見合った結果を出す。
人見知りをしないため、すぐに打ち解ける。そのため顔も広い。
親切で、仲間思いで、でも少し臆病で、といった、ごく普通の、一介の男子高校生なのである。

けれど降旗には1つだけ、特質な部分が合った。
それは人の心に巣食うこと。人の心に自分を残すことである。
けれど、それは些細なもので、大半の人間は彼の残して行った痕に気付かない。
自分自身の変化と、降旗に感じる違和感を素通りしてしまうほどの、小さな小さな痕。
黒子テツヤは、立てられた爪に気づいた、数少ない一人だった。




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