フラグ乱立注意報
(何こいつら怖い。)
降旗は気が遠くなりそうな朦朧とした意識の中で思った。
彼は今「キセキの世代」の主将・赤司征十郎に呼び出された黒子の付き添いに来ていた。
監督である相田リコに頼まれたこともあり、考えなしに黒子についてきた降旗は、自分の浅はかさを悔やんだ。
(あんなすごい奴らが、ただで済むわけないよねぇ!?)
呼び出された先には「キセキの世代」が大集合。
そして、生霊やら翳を喰われたものたちの怨念が、百鬼夜行のごとく彼らの後に続き、彼らを取り巻いていた。
しかも、キセキたちの険悪なムード。負の感情が「彼ら」を肥大化させている。
正直、今すぐこの場から立ち去りたい。
これは自分1人ではどうにもならない大きさだ。
(なんでこいつら、こんなの背負って生きてられたんだよ!?)
本来なら、あちらに連れて行かれるなりしていただろう。
中学のころはこっそり定期的に赤司や高尾とともに払っていたが、高校になってからはそうもいかない。
街中で見かけたり、試合の合った時にこっそり払っていたが、グレた彼らが敵を増やし、払ってもきりがない。
今現在、生きているのが不思議で仕方がない。
とりあえず、足元にまとわりついている髪の塊と、彼らを連れて行こうとする無数の腕だけども片づけておこう。
降旗はジャージのポケットに手を入れ、何言かを呟いた。
キセキの世代らに気づかれぬよう、そっと塩を地面に落とす。
しゅうしゅうと煙を上げながら小さくなっていく髪の毛に、ほっと息をつく。
「すまない、待たせたね。」
キセキの世代の主将・赤司征十郎。
逆光の中から現れた彼は、そっと微笑んだ。
彼らにわからぬよう、自分だけに向けられたもの。
降旗も、うっすらと口元の笑みを浮かべた。
「場違いな人が混じっているね。今僕が話したいのはかつての仲間だけだ。悪いが君は帰ってもらっていいかな?」
赤司の言葉を復唱する。
これは「彼ら」に向けられた言葉だ。
向けられた「彼ら」は、少しだけキセキたちから距離をとる。
多分、しばらくは寄りつけないだろう。
2人で言霊を放ったので、かなり強力だが、これだけの魔に「ただの」言霊だけでは心もとないのは確かだ。
「なんだよ、つれねーな。仲間外れにすんなよ。」
か、火神ぃぃーーー!!?
何てタイミングであらわれてしまったのだろう、火神。
空気読もうか、このKY。
「彼ら」にとっては、お前もキセキと同じえさなんだぞ!
「彼ら」が言霊を浴びていない火神に向かう。
それに気づいた降旗が、とっさに塩を撒くことで「彼ら」がひるんだ。
「・・・真太郎。ちょっとそのハサミ、借りてもいいかな?」
何をする気だ、何を。
って、あ・・・。こいつ、手に呪札もってやがる!
まさか・・・!
赤司がゆっくりとこちらに近づいてくる。
呪札をまいたハサミの切っ先は「彼ら」に向かっていた。
「火神くんだよね?」
一言言い置いて、赤司は火神の後ろに隠れた「彼ら」を火神ごと斬り裂いた。
わかっている。
呪札をまいた武器は神気を帯び、浄化作用が起こることも、火神を切ったことが火神を助けることにつながることも。
けれど、納得はいかない。
(・・・征十郎、あとでシメる。)
このとき、確かに何かが切れる音がしたんだ。
降旗はのちにそう語ったという。
赤司が本当にシメられたかどうかは、本人たちのみぞ知る。