降旗先輩






え?なになに?光ちゃんを主将と慕うわけが知りたいって?
う~ん・・・。まぁ、いっか!教えてあげる!
でも、光ちゃんは俺たちのものだから惚れちゃ駄目だぜ?

光ちゃんを慕う理由は俺たちの出会いにあるんだ。
俺と光ちゃんは同じミニバスの出身で、2人とも小1のころからバスケをしてた。
でもそのミニバスのコーチが帝光卒の大学生で、帝光のバスケ部みたいに一から三軍までにクラス分けしてたから
一軍の俺と三軍の光ちゃんは当然接点なし。
俺らが仲良くなったのは2年生の時だ。

俺はその頃「後ろに目がある化け物」って言われていじめられてた。
ホークアイの存在なんて知らなかったし、それを当たり前に思ってたから人と違うってわかった時、
俺自身も自分のこと化け物なんじゃないかと思った。
それに合わせるようにホークアイのせいで気分が悪くなって、休憩中に1人で休んでたんだ。
よっぽど具合悪そうに見えたんだろうね。
そのときに「大丈夫?」って声を掛けてくれたのが光ちゃんだった。

光ちゃんは学校違うから、俺の目のこと知らないし、仲良くなれるかもって、俺から自己紹介して仲良くなったんだ。
それで、休みの日に一緒に遊ぶようになるくらい仲良くなったころ、
光ちゃんと遊んでたところに俺のこと化け物呼ばわりするくそガ・・・いじめっ子たちが来たわけだ。
そこまではいい。そこまではいいんだよ。
あのくそガキども・・・!光ちゃんまで化け物呼ばわりしやがって・・・!!!
化け物の仲間かとか何とか言って・・・!!
って、あんな奴らのことなんてどうでもいいんだった。
俺を化け物呼ばわりしたやつらに光ちゃんがキレて


「高尾は化け物なんかじゃない!人よりちょっと周りが見えるだけの人間だよ!!」

「人よりってことはやっぱ化け物じゃん!!」

「じゃあ、テストで1人だけ100点取ったらそいつも化け物だっていうのかよ!?」

「うっ・・・!」

「お前らの言ってることはそういうことだっつの!自分よりすごいことできるやつをひがんでんじゃねぇよ!
 自分のすごいところを見つけて、それを伸ばしていくことをしろってんだ!!!」


ね!?超かっこよくない!?俺、こんとき光ちゃんに惚れたんだわ、きっと。
でも、そんだけじゃ済まなかったんだよ、あのくそガキ・・・!!
いい負かされた負け惜しみに光ちゃんに石をぶつけて怪我させたんだ。
医師は額に当たるし、血は出るし!しかも、くそガキは血にビビって逃げやがるし!
でも光ちゃんは怪我をした自分より、泣きそうになってた俺を心配してくれて、俺は思わず泣いちゃったんだよね。


「ふり、はたくっ・・・!ごめっ・・・!俺のせいで・・・・!」

「高尾のせいじゃないよ。それにね?高尾の目ってちゃんと名前も付いてるんだよ?」

「え・・・?」

「『ほーくあい』って言うんだって!!」


光ちゃんがどこでホークアイについて知ったのかは知らないけど、俺はこの時初めてホークアイについて知ったんだ。
っていうか光ちゃん、俺の目について気付いてたんだよね。
何で気づいてのって聞くと、光ちゃんは


「だって、いつも俺のこと守ってくれるじゃん。」

「え・・・?」

「前に、後ろから来た自転車が来てた時、俺の手引いてくれたでしょ?
 それに、後ろから来た人の道あけるために端のほうに寄ったりするじゃん。
 それで何となく見えてるんだなーって。」


これ聞いた時はホントびっくりした。光ちゃんの観察眼恐るべし。
で、俺はいじめられてた身として聞いたんだ。


「・・・怖くなかったの?後ろが見えるんだよ?」

「怖くないよ?俺は逆にうらやましいもん。」

「・・・なんで?」

「・・・俺、コーチにバスケやめろって言われたんだ。」


うらやましいって言われた時、ちょっとむかっとしたけど、光ちゃんの言葉を聞いてはっとした。


「俺、ちっちゃいから怪我するって言われた。力もあんまり強くないからぶつかったりしたら転んじゃうんだ。
 でも、高尾みたいな目があれば、誰にもぶつからないでしょ?」


光ちゃんは当時、クラスで一番小さい女の子よりも小さくて、体も細くて、折れそうなほどだった。
バスケをするにはあまりにも不向きで、それでもやめなかったのはバスケが好きだから。
賢い光ちゃんなら言われなくても分かっていたはずだ。
それでも、それなのにやめろだなんてはっきり言うのはいくらなんでも酷すぎる。
光ちゃんが人の(今は誇りに思っているけれど)コンプレックスを「うらやましい」なんていうのは、普段ならあり得ない話だ。
相手が少なからず傷付くのを知っているから。
それでも「うらやましい」と口に出していったのは、光ちゃんがそれだけバスケが好きだからだ。
続けたいんだ、大好きなバスケを。
身長や非力さなんかを理由にバスケをやめたくないんだ。
光ちゃんの思いに気づいて、俺は強く拳を握った。


このとき、俺は決めたんだ。


「だったら・・・俺が降旗君の・・・光樹くんの目になる!」

「え・・・?」

「誰かにぶつかりそうになったら俺が教えてあげる!そしたら怪我しないでしょ?コーチもバスケやめろなんて言わなくなるよ!」

「うん・・・!」


俺は光樹の支柱になろう。
なんで「守る」じゃないのかって?
それは光ちゃんが俺なんかよりずっと強くて、自分の足でしっかり立っていられるやつだからだ。
でも、転んだりしたら1人じゃ立ってられないじゃん?
だから「支え」になろうと決めたんだ。


俺は光樹の。降旗光樹の支柱になろう。
俺の。俺たちの大切な存在を支えるために。





(やっと名前で呼んでくれたね。)
(え?)
(名前で呼んでくれたら俺も呼ぼうと思ってたんだ。よろしくね、和成!)


一生支えてあげたいなーなんて思っちゃったり?



ちなみに名前の呼び方は降旗君→光樹くん→光ちゃん




8/9ページ
スキ