降旗in秀徳






中谷は、まだ土の中に埋まっている原石を見つけたような、そんな興奮と高揚感に包まれながら、試合を観戦していた。
たった5人の選手とマネージャー1人という、まるで漫画のような選手層と、帝光中のは及ばずとも、強豪と称される中学の、分厚い選手層との試合だった。
弱小と称されるような、たった5人の選手たちは、思いのほか強豪校に食らいつき、点差は目も当てられないというほどひどいものではなかった。
しかし、後半戦中に、問題が起きた。弱小校の主将が負傷したのだ。
変わりにマネージャーが出場したのだが、彼は緊張で震えている。
ああ、終わったなと、会場に来ていた誰もが思ったことだろう。
しかしその試合は、そのマネージャーの投入により、劇的に変化した。

第3Qということもあり、疲れが見え始めていたのだが、投入されたマネージャーは、少し前にボールを投げたのだ。
選手たちはボールを取ろうと必死に走り、全体のスピードは格段に上がった。
それだけなら誰でもできることなのだが、彼はパスを出す選手によって、パスの長さを変えているのだ。
選手のことを知りつくしていなければ、できない芸当である。
それに加え、彼が声をかけた選手は、そのあとの動きが格段に良くなっている。
一番大きな変化は、一度もドリブルで向けなかった選手を、あっさり抜いてしまったことだ。
相手の癖や弱点がわからなければできないこと。

中谷は食い入るようにその試合を見つめた。

(私の探し求めていたものはこれだ!)

20点あった点差が、残り7点差まで縮まった時、試合は終了した。
泣きながら肩をたたきあう彼らには申し訳ないが、中谷は興奮冷めやらぬ思いだった。
探し求めていたものが見つかった中谷の行動は迅速だった。
すぐさま弱小校と連絡を取り合い、中谷の見つけたPGの卵が降旗光樹であると知った。

(やっと見つけた・・・!)

その試合の一週間後、PGの原石こと降旗光樹は、秀徳高校に進学することが決まった。




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