交換学生降旗!
今日から3日間、降旗は桐皇学園に通う。
制服は誠凛のままなので、嫌でも目立つ。
誠凛生が自分だけじゃないのが救いだ。
降旗の通うクラスにも、自分のほかに1人誠凛生がいる。
「交換学生の降旗光樹です。よろしくお願いします。」
「降旗君の席は窓側の一番前の席です。」
降旗は青峰と交換でこのクラスに来た。
(余談だが、青峰が誠凛に行ったのは火神と1on1をしたいがためである)
正直、この時ばかりは交換学生として出してもらえてよかったと思った。
このクラスの席順は出席番号で決められている。
青峰の出席番号は1番なので最前列の席だ。
隣はバスケ部の桜井である。
「えっと、よろしく。」
「は、はい!すいません!」
「いや、謝んなくていいよ。えっと・・・桜井?」
「はい!そうです、桜井です、すいません!!」
「・・・何で謝んの?」
困惑したような苦笑を浮かべていた降旗が不機嫌そうに眉を寄せた。
口をとがらせる様はすねているようにも見える。
「す、すいません!」
反射的に謝るが、降旗の機嫌はさらに降下したようで、眉間のしわが深くなった。
「俺、謝れるのは嫌いだな。」
「え・・・?」
「だって、悪いことしたわけじゃないじゃん。
それに、あんまり謝られてもいい気はしないし逆に困るよ。
謝りすぎて困られたことない?」
「・・・あ。」
思い当たる節はある。
桜井がそれこそ申し訳なさそうに眉の端を下げれば、降旗の表情が和らいだ。
「ね?」
「・・・はい。」
機嫌が直ったようで、降旗は小さく笑っている。
桜井もほっとしたように微笑んだ。
「じゃあ、改めてよろしく、桜井。」
「はい、降旗さん。」
「ははっ、タメなんだから敬語じゃなくていいよ。」
「う、うん。」
敬語を外せば満面の笑みを向けられ、桜井はわずかに動揺した。
「さんづけもしなくていいからなー」と続けられる。
何なんだろう、この人は!思わずそう呟いてしまいそうになった。
「・・・あ、あの。」
「うん?」
「こ、光樹くんでも、いい・・・?」
嫌がられるかもしれない。
そう思いながら断られることを覚悟して尋ねた。
当たって砕ける覚悟である。
けれど、降旗は太陽が溶けだしたような笑みを浮かべた。
「良いに決まってんだろ、俺も良って呼ぶからな?」
「うん・・・!」
桜井は思わず笑みを浮かべた。
(何だろう、この人可愛い・・・。)
登校初日、クラスの好感は良好である。