ドS旗光樹くんと健気征十郎くん
「あの、降旗くん。」
「ん?」
厳しい練習が終わり、黒子は降旗に声をかけた。
シュート練習で大量に転がっているボールを片づけている最中なので、両手がふさがれている。
「赤司君に会ってくれませんか?」
黒子の言葉が降旗の耳に届いた瞬間、降旗は抱えていたボールを取り落とした。
降旗の顔は青を通り越して白い。
彼にとって赤司はそれほどに恐ろしい存在なのだ。
「え?なんで?え?俺、死亡フラグ一級建築士かなんかなの?」
頭を抱えて震える降旗を見て、黒子は思わず同情した。
赤司と降旗の2人に。
2人の溝は果てしなく深そうだ。
「降旗君。大丈夫です。赤司君はハンカチのお礼がしたいそうなんです。」
「ハンカチ・・・?」
少し考えて、ああとうなずく。
「別にいいのに・・・。赤司って律儀なんだな。」
苦笑交じりの言葉に黒子はわずかに安心した。
彼は気の強いほうではないが、懐の大きい人間である。
人の良心を信じることのできる素直な性分だ。
「明日オフだし、明日ならいいって伝えてくれないか?」
「わかりました。」
降旗は気づいていただろうか、自分の顔が、まだ若干青い事に。
黒子は罪悪感を覚えながらも携帯を開いた。
(せめて、鋏は持ってこないように注意しておこう。)