ドS旗光樹くんと健気征十郎くん
赤司征十郎は降旗光樹が好きだ。
2人はWC初日にある意味運命的な出会いをした。
その時の認識は、ただの部外者でしかなかった。
しかし、誠凛に敗北したWC最終日、赤司は初めての敗北に一人涙していた。
その時、無言でハンカチを差し出してくれた降旗の優しさに惹かれたのだ。
けれど、初対面で彼の友人・火神大我に鋏を突き刺したこともあり、この恋は絶望的とも言えた。
ならばせめて、隣にいることを許されるくらいの関係になりたい。
赤司は意を決して携帯を手に取った。
「と、いうわけなんだ。」
赤司は東京のマジバにいた。
現在、冬休みであるため、里帰りと称して東京に戻ってきたのだ。
向かいの席に座る黒子に降旗のことを相談するために。
「は、はぁ・・・。」
黒子は戸惑いがちにうなずいた。
赤司はすべて話した。包み隠さずすべて。
たった一度に敗北に涙したことも恥を捨てて。
黒子は困惑していた。
頼られることは嬉しいし、友人として信頼されているのだと思うけれど、
いつになく弱気な彼に黒子は困っていた。
まるで背に腹は代えられないとばかりに真剣な顔からも、赤司らしさを感じなかったからだ。
「いきなり友達になりたいとは言わない。ハンカチのお礼だけどもしたいんだ。」
「と、とりあえず今日、午後から練習なので、その時に、言ってみます・・・。」
「頼むよ。」
黒子はふらつきそうになる足を必死で動かし外に出た。
外に出た瞬間、思わずうずくまってしまったのは仕方がない。
(降旗くん・・・君はとんだ魔性です。)
あの魔王をここまで盲目にしてしまったのだから。