降旗光樹はただ者じゃないと信じてる
淡い春の日差しが真新しい校舎を包む。
柔らかな陽光の中に桜の桃色が映えるここは、去年新しく設立された、誠凛高校である。
今日は新入生たちが部登録をする日だ。
校門の前まで、たくさんの生徒たちでにぎわっている。
そんな中、にぎわう集団から少し離れたところに、2人の少年がいた。
「すげぇ人。」
「そうですね。」
亜麻色の髪の少年と、空色の髪の少年だ。
「俺、こんだけに人掻き分けていける自信ねぇから俺の入部届け書いといてくんね?」
「いいですけど・・・。」
「帝光中ってのは隠してくれよ?」
「わかりました。」
空色の髪の少年は、するすると人ごみをよけていく。
途中にある掲示板をちらりと見て、バスケ部の登録場所を確認する。
幸いにも、あまり遠くではない。
ふと、空色の髪の少年が亜麻色を探す。
亜麻色は変わらずにそこにいた。
立ち止まって、亜麻色をみつめていると、彼がこちらに気づいた。
彼の顔に、すぅと目を細めて、とけるような笑みが浮かんだ。
小さくではあるが、確かにこちらに向けて、手を振っている。
存在が希薄な空色の髪の少年は、よく人に見失われてしまう。
そのため、見つけてくれるという当たり前が、なかなかにうれしい。
(そういえば、君は最初から僕を見つけてくれましたね・・・。)
懐かしさに浸りながら、空色は、確かに手を振り返した。