【演練で見かけた凄まじい審神者の話をする】
お疲れ、とねぎらいの言葉が流れる。それを一通り流し見て、俺はそっと端末を閉じた。
指が疲れた。けれどそれ以上に心が疲れた。
俺はこのスレに書いていないことがある。彼女らの帰り際の光景について、だ。
そこに微笑ましさなんてなかった。幸か不幸か、それに気づいたのは俺だけだったようだけれど。
まさかあんなふうに怒るだなんて、と言われていた山姥切国広が言ったのだ。
『俺はただ、あんな奴らのために仲間が折られただなんて思いたくなかっただけだ。あんな奴らのために折れただなんて、誰も報われないだろう……』
この一言で、分かってしまったのだ。彼らが傷を負った刀剣であると。彼女は彼らに前を向かせた人であるのだと。
何て重いものだろう。
これを一人で抱えるのが嫌で、スレを立てた。
けれどスレを書き込むうちに、駄目だと、出来ないと思ったのだ。自分より年若い女の子が、これを一人で抱えているのだと思ったら。
「これを、一人で……」
演練が終わってから、心が重いままだ。
誰かに吐き出したくてたまらない弱音。けれど彼女は、そんな素振りを一切見せず、刀剣とともに凛としていた。
刀剣達だってそうだ。何の翳りも見せず、立派な刀剣男士であった。
(大丈夫かな、あの子たち……)
温かな心が壊れぬよう、深い闇に沈まぬよう、祈るばかりだ。