右大将リリア×姐さん






「……なぁ、」
「話は聞くから、その前に水を飲んでくれ。結構飲んでいるだろう?」
「そうでもねぇよ」
「そんな赤い顔で言われてもな……。ほら、」
「…………ん、飲んだぞ」
「うん、なら話を聞こうか。それで、どうしたんだ?」
「…………たまに無性にお前を抱きしめたくなるんだが、」
「うん」
「…………それって何だ」
「そうだな……。私だったら、それを“愛しい”と形容するけれど」
「いとしい……」
「大事にしたい、守りたいと想う相手に持つ感情だろうな。相手を好ましく想っているからこそ生まれるもの。それを持てるのはきっと幸せなことだから、君の胸に灯った想いが“愛しい”という感情なら私は嬉しいよ」
「…………俺の衝動が、お前を“愛しい”と思う気持ちだってなら、お前を“愛しい”と思ったとき、俺はどうすりゃいい……」
「抱きしめたら良いんじゃないか? 私は君相手なら、受け止めるのも吝かではないけれど」
「おっまえ……!」
「だって私も愛しいもの」
「…………はっ!?」
「“愛しい“というのは、何も恋人や夫婦だけに抱く感情ではないだろう。家族だったり、友人だったり、すべてのものに対して適用される心の動きだよ。だから、私が君に”愛しい“と思うのも、君が私を抱きしめたくなるのも、何もおかしいことではないのさ」
「…………本当に、抱きしめても良いのかよ……?」
「もちろんだとも。今でも良いけれど、どうする?」
「いっ……今は、良い………」
「そうか。残念だ」
「…………俺はお前に勝てる気がしねぇよ……」
「はは、何の勝負だ?」
「俺にも分からん」




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