右大将リリア×姐さん
ツバキと初めて出会ってから、200年ほどの時が過ぎた。何年も顔を合わせないこともあったが、旅先で偶然再会するようなこともあり、縁とはなかなか切れないものだ、と感心する。
いつだったか共に酒を飲み交わしたパブはとっくの昔になくなって、その場所は何度か姿を変え、今は洒落たバーに落ち着いていた。
バーのカウンターに座り、安いワインを頼む。以前飲んだエールは酷いものだったが、技術が進んだ今では、安いワインもなかなかの品質を保っている。悪くないな、と赤い液体で唇を湿らせた。
「しっかし、お前も諦めの悪い奴だな……。俺は義務感みてぇなもんもあるが、お前にはそれすらないんだろう? よくもまぁめげねぇもんだ」
「それだけが私の取り柄なんだ」
「……そうかよ」
諦めないこと。それだけが誇りなのだと彼女は言う。それくらいしか誇れるものがないのだ、と。
折れないわけじゃない。挫けないわけじゃないのだ。もう嫌だと思わないわけではない。もう終わりたいと思わないわけではないのだ。ただ彼女は、何度心が折れてしまっても、立ち上がることはやめたくないと、前を向き続けてきただけ。そしていつしか、そうすることに慣れすぎてしまっただけなのだ。それが当たり前になってしまって、立ち止まるということが出来なくなってしまったのだ、このツバキという女は。
どうしようもない女だ、と肩を竦める。傷を負うだけ負って、傷口から溢れ出る血をそのままに、それでも歩き続けることしか出来ないのだから。
仕方のない女だ、とため息をつく。ツバキという女は、誰かが支えてやらないと、呆気なく崩れ去ってしまいそうなのだ。きっと誰かが抱きしめてやらないと、自分を蔑ろにし続けるのが、ツバキという生き物だった。
(…………俺が、その役目をしてもいいもんかねぇ……)
もう一度、ワインに口を付ける。悪くないと感じていたワインが、今までで一番不味いものに感じられた。