君の声が聞こえる
「ここか、裏口は・・・」
裏口にたどりついたサトシとピカチュウ。
サトシがドアのぶに手をかけると、ガチャリと鍵の掛かっている音がする。
「鍵がかかってる・・・。ピカチュウ、一緒に体当たりしてこじ開けるんだ!」
「ぴっか!」
2人で息を合わせて、ドアにぶつかる。
それを数度繰り返し、ようやくドアが開いた。
「よし、開いた!・・・でも、真っ暗だな・・・」
発電所内は暗く、どこに何があるのかもわからない。
サトシが背負っているリュックを降ろし、中から懐中電灯を取りだした。
「おーい、マイナーン!」
「ぴかぴかー!」
「どこだー?返事をしてくれー!」
「ぴーかーちゅーう!」
発電所内に声が響く。
しかし返事はなく、自分たちの声がエコーされる。
肩を下げ、ピカチュウと顔を見合わせる。
と、唐突にピカチュウの耳がピン、とたちあがった。
「ぴかっ?」
「ピカチュウ?見つけたのか?」
「ぴっかぁ!」
「案内してくれ!」
「ぴかっちゅ!」
ピカチュウが走る。
時折障害物に阻まれるものの、ピカチュウの示す場所までいきつくことができた。
行き着いたのはエレベータの前だった。
「ぴかぴか」
「この中にいるのか?」
「ぴーかっちゅ!」
扉に耳を押し付けて、中の様子を探ると、かすかに声が聞こえる。
「マイ~・・・マイ~・・・」
「マイナン!?そこにいるのか!?」
「マイッ!?」
「マイナン!今出してやるからな?」
マイナンが中にいることを確かめ、サトシが扉に手をかける。
エレベータをこじ開けようとするが、いかんせん力が足りない。
「くっ・・・開かない・・・!どうすれば・・・」
肩で息をして、悔しそうに扉を眺める。ピカチュウも悔しそうに扉をカリカリとひっかいていた。
「・・・そうだ!ゴウカザル!君に決めた!」
「ウオキャ!」
「ゴウカザル、一緒に扉を開けるのを手伝ってくれ!」
「ウオキャ!」
今度はサトシとピカチュウ、ゴウカザルの3人で力を合わせる。
エレベータの重い扉はなかなか開かない。
「うく・・・う、おおお・・・!」
「ウ、オ、キャアアアア・・・!」
「ぴーか、ちゅううう・・・!」
ゴト・・・ガ、コン・・・
ほんの少し、指が入るくらいの隙間が、ようやく生まれた。
「やった!開いた!」
「ウオキャ!」
「ぴかっちゅう!」
「このまま一気に開くぞ!せー・・・のっ!」
ゴゴ・・・ガ、ガコン!
エレベータの扉が完全に開く。
そこには、涙でぬれたマイナンがいた。
「マイナン!」
「ま、マイ~・・・!」
閉じ込められていた状況から脱出できたアンドから、マイナンが再び涙を流す。
そんなマイナンを抱きしめ、サトシが背中をなでる。
「怖かったな~。もう大丈夫だからな!」
そう言ってマイナンを抱き上げ、ゴウカザルのボールを取りだした。
「ありがとう、ゴウカザル。戻って休んでてくれ」
「ウオキャ!」
「ピカチュウもありがとな」
「ぴーかっちゅ!」
「よし、急いでシンジのところに戻るぞ!」
「ぴかちゅう!」
ゴウカザルをボールに戻し、マイナンを抱えたまま、サトシとピカチュウは元来た道を急いだ。