君の声が聞こえる
木々に囲まれた発電所の外で、電撃が降り注いでいる。
そこにはプラスルとコイルたちと、作業服を着た男性たちがいた。
「やめろ!やめてくれ!」
「どうしていきなり攻撃してくるんだ!」
発電所の職員たちは悲痛な声を上げる。
プラスルとコイルたちは、そんな職員たちを威嚇している。
プラスルの頬にバチバチと電流が流れる。
それに連動するように、コイルの体からも火花が散った。
「コイー!」
「プラー!」
「うわあああああああああああ!!」
小さな体から「放電」が放たれる。
職員たちはよけることもできずに頭を抱えて衝撃に耐えようとした。
「エレキブル!守る!」
プラスルと職員たちの間に入った黄色の巨体が緑色の球体をまとい、放電をはじく。
プラスルたちは新たな敵に向けて威嚇を始めた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ・・・ありがとう・・・」
サトシとシンジがうずくまっている職員に駆け寄る。
職員は驚いたような表情をしながらも、礼を言うのは忘れなかった。
「一体、何があったんですか?」
「そ、それが・・・私たちにもよくわからないんだ」
「あの子たちはいつもこの発電所に電気をもらいに来るんだが、今日は何故だか電気が急激になくなってしまって、電気の供給ができなくなってしまったんだ」
「それで停電が・・・」
「でも、あの子たちが暴れる理由がわからないんだ」
「電気をもらえなかったくらいで暴れたりするような子たちじゃないんだ」
「聞き分けのいい、とても優しい子たちなんだよ」
この状況の説明を受けている間も、プラスルたちはこちらを睨みつけている。
体からは電気がほとばしり、火花が散っている。
今、攻撃してこないのは、突然割って入ってきたエレキブルを警戒しているからだ。
『返せ!』
「返せ・・・?」
「え?」
『返せ』 『ともだち』
『友達を返せ』 『かえせ』『ともだち』
『ともだち』『かえせ』 『友達』
『かえせ』 『友達』 『返せ』
「友達・・・?」
「シンジ!俺にも聞こえた・・・!」
唐突に呟いたシンジに疑問符を返したものの、サトシにもすぐに声が聞こえた。
2人で顔を見合わせ、職員を振り返った。
「あの!彼らを見て、何か変わったことはありませんか?」
「変わったこと・・・?」
サトシの問いに職員たちがいぶかしげに眉を寄せる。
じっと彼らを見つめていた若い職員が、声を上げた。
「マイナン!」
「え?」
「マイナンがいないんだ!」
若い職員の叫びに、周りの職員も、はっとして、もう一度プラスルたちを振り返った。
「本当だ!マイナンがいない!」
「マイナン?」
「あの子たちと仲がいいんだ。もしかしたら、彼がいなくなったのを私たちのせいだと・・・」
「何だって!?」
顔を青くした初老の男性の言葉にサトシが驚きの声を上げる。
その時、ひときわ大きな火花が散った。
「プラー!」
「コイー!」
「エレキブル、守る!」
もう一度放たれた放電を、守るではじく。
シンジが、サトシを振り返り、言った。
「サトシ、ここは任せろ。お前はマイナンを探せ」
「えっ!?でも・・・!」
「いいからいけ!おそらく、この発電所の中だ。ずっと、声が聞こえるんだ・・・。早く、助けてやれ」
そう言ったシンジの表情は、有無を言わせぬものだった。
「シンジ・・・。分かった、気をつけろよ」
「ふん、さっさと行け」
「おう!」
サトシとピカチュウはプラスルたちのわきを通り、発電所の裏口に向かう。
それに気づいたコイルが電撃を放とうと、サトシに向かっていく。
「雷でひるませるんだ!」
エレキブルが雷を放つと、コイルはサトシを捨て置き、エレキブルと対峙する。
そのすきに、サトシは裏口へと走った。
「頼んだぞ、サトシ・・・」