歌い手パロ






 サトシ一行はポケモンセンターにいた。ポケモンセンターに設置された大型モニターが一番見えるソファを陣取り、セレナはモニターを凝視していた。
 テンペストの新作動画を見て以来、セレナはポケビジョン制作に熱を注いでおり、2作目を投稿したのである。
 ポケビジョンは人気動画を100位までランキング化し、特に人気だった10作品で特集を組み、モニターで放送するのである。
 前回セレナが投稿したものはランキング圏外で、今回こそは、と張り切っていた。
 (ちなみにシトロンの作品が微笑ましいと話題になりぎりぎりランキングに入っていたことで悔しい思いをしたのも要因している)
 しかしやはりランキングには入っておらず、落ち込んだものの、気持ちを切り替えて上位10作品を鑑賞することにしたのだ。
 自分の作品をよりよいものにするための意気込みが感じられ、それをサトシ達は微笑ましく見守っていた。


「あ、始まった!」


 セレナが嬉しそうな声をあげ、サトシ達はモニターを見やる。
 ポケビジョンランキングを紹介するマスコットキャラクターが10位の作品の紹介を始めた。
 どれもこれも素晴らしく、セレナたちは終始目を輝かせてモニターを見つめていた。


『そして注目の第一位はこれだ―――! 話題沸騰中! 超人気歌い手グループ「テンペスト」によるバンドだあああああああああああ!!!』


 マスコットキャラクターのテンションが一気に上がる。モニターを見ていた視聴者たちのテンションもうなぎ昇りで上がっていく。
 宣言通りに一位を攫えたサトシは嬉しそうに笑った。


『巻き起こすぜ! テンペスト!』


 暗転した画面の中から、お決まりのフレーズが流れ、視聴者のボルテージがマックスになる。
 オスとメスのケンホロウがカーテンを開けるように幕を開けることによって、歌は始まった。
 メンバーは全員がボーカルだった。黒い半そでTシャツに大きめの黒いズボン。ゴツいシューズ。黒のリストバンドには、メンバーのイメージカラーでラインが入っていた。
 マイクを持って歌うメンバーの後ろでは、彼らのポケモンたちがバックダンサーとして踊りを披露し、楽器を奏でていた。
 ゴウカザルとジュカインがドラムをたたき、リザードとリザードンがギターを弾きならしている。その横では2匹のエレキブルがベースをはじき、キーボードの前にはユキメノコが。フシギダネはハーモニカを奏でている。
 エンペルトはシンバルを。2匹のピカチュウは、シンバルを片方ずつ持ち、息を合わせてシンバルを鳴らしていた。
 時折スバメとオオスバメが花びらを散らし、曲を盛り上げる。
 ここがライブ会場であるかのように、視聴者は歓声をあげていた。
 最後はまた2匹のケンホロウが幕を下ろし、動画は終了した。


「ふ、わぁ……! すっごかったねぇ!」
「ホントホント!」
「さすがテンペストです!」
「みんなかっこよかったー!」


 セレナたちは、動画が終わっても興奮冷めやらぬ雰囲気ではしゃいでおり、サトシは鼻が高い。
 嬉しそうに笑うサトシに、ユリーカが満面の笑みを向けた。


「サトシ、嬉しそう!」
「ん? だって、大好きな奴らがたくさんの人に認められたり好かれるのって、嬉しくないか?」
「うん、嬉しい!」
「サトシもすっかりテンペストのファンね!」
「おう!」
「よーし! テンペスト目指して頑張らなくちゃ!」


 楽しげに笑うセレナたちに、サトシは口角を上げる。
 打倒テンペストを掲げるセレナに、ひっそりと笑う。


(そう簡単には超えさせないぜ!)


 サトシは隠しもしないで、声をあげて笑った。


(次は何をやろうかな?)







おまけ(セレナが不憫です)

ユリーカ「みんなかっこいいけど、シンジュさんとポケモンたちは可愛いよね!」
シトロン「そうだね、ユリーカ」
サトシ「ホント可愛いよなー」
セレナ「(サトシったらホントにポケモンが大好きなんだから! そんなところも素敵だけど!)」
サトシ「シンジュ!」
セレナ「えっ!!?」
ユリーカ「あ、やっぱりサトシもそう思う!?」
サトシ「うん。世界一可愛いんじゃないかってくらい!」
セレナ「せ、世界一、可愛い……」
ユリーカ「だよねー!」
サトシ「おう!(なんてったって俺たちの妹だからな!)」




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