歌い手パロ
サトシは森は街外れの森の中を走っていた。セレナたちには「特訓」だと告げて、内緒でここにきている。――大好きな幼馴染たちに会うために。
「もうすぐ会えるぞ、ピカチュウ!」
「ぴっかぁ!」
サトシの嬉しそうな声に、ピカチュウも嬉しそうに笑う。
ぱっとサトシの顔が輝き、その視線を追っていくと、5人の色とりどりの少年少女が集まっていた。
談笑している5人の中に一刻も早く飛び込みたくて、サトシは声を張り上げた。
「おーい!」
「! サトシ、こっちだよ!」
サトシが大きく振った手に手を振り返したのはヒロシだった。彼はサトシが走ってくるのに合わせて彼に駆け寄り、伸ばされたサトシの手に自分の手を合わせてハイタッチをした。
彼の肩に乗ったピカチュウと、ヒロシの相棒のピカチュウ・レオンも肩から飛び降りた先でハイタッチをしていた。
「久しぶり」
「元気そうだね」
「おう!」
次に声をかけてきたのはシゲルとシューティーだった。2人同時にハイタッチのために手を差し出され、サトシは両手でそれを受けた。
「遅いぞ、サトシ」
「そうだぞ! もう少し遅れてたら罰金とってたぞ!」
「ごめん、ごめん」
悪態をつきながらも手を合わせたのはシンジで、文句を言いながらも楽しそうにハイタッチを交わしたのはジュンだ。それぞれ全員とあいさつを交わし終えたサトシは、談笑の輪に入った。
「それにしても、まさか全員がカロスにいるとはね」
「本当にね」
シューティーとシゲルの苦笑に、サトシは楽しそうに笑う。
「みんなの動画の背景に見覚えがあってさ」
テンペストのメンバーは、自然を背景に動画を取ることが多い。それは旅先なんかでは特にお決まりで、背景を見てどこにいるのか分かることもある。
他の5人もサトシと同様、何となく全員がカロスにいるのではないかと想定していたらしく、驚きは薄い。
「で?」
「ん?」
「私たちをこんなところに呼び出して、何をたくらんでいる?」
ニヒルな笑みを浮かべたのはシンジで、他のメンバーも楽しげにサトシを見つめていた。
その楽しげな笑みにサトシは苦笑した。
「ばれてた?」
「呼び出された時点でな」
あはは、と困ったような顔で楽しげに笑うサトシに、シンジが肩をすくめる。
そんなシンジの肩にシゲルが顎を載せ、後ろから腕をまわした。
「というか、僕たちの中に気づかないやつがいると思う?」
「だよな~」
「舐めすぎだよ。一体、何年の付き合いだと思ってるの?」
シゲルに賛同するようにジュンとシューティーが肩眉を跳ね上げた。
「ごめん、ごめん」
「で?何する気?」
「うん、実はさ……」
簡単に謝ったサトシに、ヒロシが先を促す。促されたサトシは、楽しげに両手を広げ、5人と円陣を組むように肩に手を回した。
耳打ちされた言葉に、5人は口角を吊り上げ、サトシは満足そうに笑った。
(ていうか、シゲル、お前何どさくさにまぎれてシンジ抱きしめてんの)
(えー、いいじゃん、僕らの癒しなんだから、癒されたって)
(俺も癒されたい)
(僕も)
(俺も!)
(僕も!!)
(全員かよ。……良いぞ、来いよ。クレバーに抱きしめてやる)
(きゃー、シンジ、抱いてー!)
(えー、僕はむしろ抱きたい)
(((シゲル、自重)))
(……疲れているのか?)
(ははっ、研究員って疲れるね。……誰が七光りだ、ざけんなks)
(ははっ、血祭り決定)
(特定した)
(モブ終了のお知らせで~す)