コンテストマスター






「はぁ~、やっと終わった~」
「疲れた~」
「お疲れ様です」


正午を回り、時間ぎりぎりでエントリーを終えたハルカとヒカリは大きく伸びをした。
買い物から帰ってきたシトロンたちと合流し、ねぎらいの言葉をもらう。


「サトシはまだ戻ってきてないのね」
「ジム戦の特訓だって!」
「サトシらしいかも!」


すっかり仲良くなった一行は、外に出ようと歩きながらも談笑する。
ウィーンとポケモンセンターのドアが開いたことに気付き、そちらを見ると、真剣な表情をしたサトシがポケモンセンターに飛び込んできた。


「サトシ!?」
「ごめん、そこどいて!」


サトシから鋭い声が飛び、慌てて道をあける。
仲間たちをほとんど無視してカウンターに飛びついたサトシに、ユリーカたちは眼を瞬かせた。


「すいません、ジョーイさん!コンテストのエントリー受付ってまだやってますか!?」
「ご、ごめんなさい・・・。エントリー受付はもう終わってしまったの・・・」
「そんなぁ・・・」


申し訳なさそうなジョーイの声に、サトシが肩を落として落胆する。
規則だから、と言われてしまえば、サトシは何も言えない。


「なら、私が許可しましょう」


凛とした声が響いた。
コツコツと革靴のかかとを鳴らしながら、白い仮面をつけた人物が、優雅に歩いてくる。
その美しさに、誰かがはっと息をのんだ。


「し、シンジュさん・・・」
「彼は時間内に列に並んでいたが、エントリーは時間内に終わらなかった。違いますか?」


口元にささやかな笑みをうかべ、首をかしげる。
ジョーイはパッと頬を赤らめた。
サトシは、唐突に登場したシンジュに驚きに目を瞬かせる。


「さぁ、ポケモン図鑑かトレーナーカードを出して」
「え、でも、いいんですか?」
「ええ、特別に、」


だから、これは秘密ですよ?
そう言って、口元にほっそりとした指を当て、しー、と小さく息を吐いた。
シンジュはサトシからポケモン図鑑を預かると、そのままカウンターに回り、ジョーイの背後から手を伸ばし、サトシのエントリーを完了させた。
ジョーイが赤面し、硬直していたが、素知らぬ顔をして、サトシに笑いかけた。


「次は時間内にお願いしますよ?」


そう言っていじわるな笑みを浮かべるシンジュにサトシは苦笑して「はい、」と素直にうなずくのだった。











そのまま現れた時と同じように優雅にシンジュは去っていった。
我に返ったハルカたちにさんざん問い詰められることになったのだが、それはまた別の話。




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