コンテストマスター






「ムラサキカップ?」
『そう!カロス地方のヨヒラタウンで行われるの!』


サトシは今、電話ボックスの前にいた。
ポケモンセンターでポケモンたちの回復を待っている間に顔なじみの博士・オーキドに定期的に入れている連絡を入れたのだ。
簡単なあいさつと近況を報告し、いつものように世間話に入ろうとした時、ふいにオーキドが「客が2人ほど来ている」と言い出したのだ。
そうしてオーキドの背後から現れたのは懐かしい顔ぶれのハルカとヒカリの連名だった。
彼女たちはジョウトにいるはずなのに何故?と思ったことをそのまま口にすると、彼女たちに嬉しそうに「今日、カロスに向かって旅立つためだ」と言われた。
何でも、カロスで開かれるコンテストに出場するためらしい。
ジョウト地方の空港からカロスに向かう便はなく、カントーに来たらしい。
そうして折角カントーに来たのだから、とオーキドの元を訪ねたのだという。


「でもなんでわざわざカロスで開かれるコンテストに?」
『それはねぇ・・・』
『コンテストマスターが開いてるコンテストだからかも!』


2人が『ミクリ様』と呼び、慕っているミクリと同じコンテストマスターが開くコンテスト。
なりほど、2人がわざわざカロスに来るのもうなずける。
それにコンテストマスターの開くコンテストのリボンは全地方のグランドフェスティバルの出場規定リボン数に数えられる。
2人がぜひともゲットしたいリボンだ。


「いつ開かれるんだ?」
『明後日よ』
「応援に行きたいけど、ヨヒラタウンってどこだ?」
「ヨヒラタウンなら、次の町ですよ」
「え?」


サトシの疑問に答えたのは画面の向こうの2人ではなくサトシの背後から聞こえてきた声だった。
驚いて振り向くと、そこにはピカチュウたちを連れたシトロンたちが立っていた。
どうやら回復が終わったらしく、元気そうな姿でピカチュウたちがサトシに飛びついた。


「ヨヒラタウンは紫陽花がとっても綺麗な街よ」
「そうなんだ」
「ところで、今日は誰と話してるの?」


回復を終えたフォッコを抱きかかえながらセレナが笑う。
ちらりと見えた画面に映った人物がオーキドでないことに気づいたユリーカが首をかしげた。


「紹介するぜ。この2人は昔、俺と一緒に旅をしていたハルカとヒカリ。今はジョウト地方でコンテストに出場してるんだ」
『初めまして!私、ヒカリ!』
『私はハルカ!』


気さくな笑みを浮かべ、2人がそろって手を振った。


「私はセレナ。この子はフォッコ」
「私、ユリーカ。この子はデデンネ。こっちはお兄ちゃんのシトロンとそのポケモンのハリマロン!」
「初めまして」
「で、こいつらが新しくゲットしたヤヤコマにケロマツだ」
『『よろしくね!』』


お互いに自己紹介を終え、ハルカとヒカリがサトシに向き直った。


『じゃあそういうわけだから、明日ヨヒラタウンで会おうね!』
「おう!必ず応援に行くからな!」
『じゃあ、また明日!』


サトシに手を振り、セレナたちにも手を振って、ハルカとヒカリは通話を切った。
2人の会話にシトロンたちが首をかしげた。


「さっきの2人ってジョウトを旅してるんじゃなかったんですか?」
「うん。そう何だけど、ヨヒラタウンで行われるコンテストに出場するためにカロスに来るんだってさ!」
「じゃあ2人とは久々の再開になるのね!」
「よかったね、サトシ!」
「おう!」


サトシが嬉しそうに笑う。
ピカチュウも久々に昔の仲間と再会できることに喜びを感じているのか、楽しそうだ。
サトシの満面の笑みにユリーカたちも嬉しそうに笑った。


「ヨヒラタウンはすぐ隣の町で、今から行けば夕方にはつきますが、どうします?」
「もちろん行くぜ!よーし、そうときまれば出発だー!」


ケロマツたちを肩に乗せたまま、サトシが走り出す。
それを見た3人が荷物を抱え、慌ててサトシが追いかける。
ポケモンセンターを駆け抜け、街へと飛び出した。


「ちょ、待ってよ、サトシー!」
「置いてかないでよー!」
「っていうか、その前にヨヒラタウンの場所知ってるんですかー!?」
「あ、」


4人で街中を駆け抜けていく。
3人より前方を進んでいたサトシがシトロンの言葉にぴたりと足を止めた。
サトシがくるりと振り返る。
サトシは後頭部を掻きながら苦笑していた。


「どっち?」


サトシの苦笑に、3人は全力ですっ転んだ。




3/16ページ
スキ