繰り返す少年ら
『過去との検証』
小卒大人法。これは小学校を卒業したら、一人前として認められるという法律だ。卒業証書はトレーナーとして旅立つことが許可される免許証のようなものも果たしている。
しかし、逆行したサトシ、シンジ、シゲルはまだ小学校に入学したばかりの年齢で、3人は学校に通っていた。
「終わった―!」
学校が終わり、放課後となる。じっとしているのが苦手なサトシは、苦手な授業が終わり、嬉しそうにはしゃいでいる。
「授業を受けるなんて久々すぎて、何か疲れちゃったよ」
はしゃぐサトシとは対照的に、シゲルはぐったりと苦笑している。
すでに履修済みのものをもう一度習うのはなかなかに苦痛である。その上シゲルもじっとしているよりは動いている方が好きで、彼も授業が終了し、解放された気分に浸っていた。
と、ここで2人は一言も話さないシンジの存在に気づいた。普段から口数は多くないが、無口というわけではない。ここまで話さないシンジに、2人が目を向けた。
「シンジ?」
「どうしたの?」
「……いや、」
どこか困惑したような表情を浮かべるシンジに、2人が顔を見合わせる。シンジはしばらく間をあけて、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「シンオウの授業とは、随分と内容が違っていた、」
「まぁ、生息しているポケモンが違うからね」
「そうではなく、根本的に違うんだ」
「え?」
シンジの言葉に、シゲルが納得がいった、というようにうなずく。けれどもシンジが首を振り、サトシが首をかしげた。
学校には、いくつか種類がある。一つ目は小学校。これを卒業しなければ、たとえトレーナーズスクールなどの学校を卒業しても、法律上大人として認められない。トレーナーズスクールやコーディネーター育成スクールは小学校と並行して、または卒業してからも勉学に励みたいものが学ぶための学校なのである。
だからと言って、ごく普通の小学校でも、トレーナーやポケモンについても履修する。座学や体育に加え、トレーナーとしての心構えを学ぶ授業も行われるのである。
「マサラは道徳的な授業が多いように思う」
どんなトレーナーになりたいか。どういうふうにポケモンと接していきたいか。そう言ったものが主に行われている。
けれどそれはマサラ特有のもので、トバリは違うのだという。
「トバリシティは基本を土台に、それをどう応用に生かすかに重きを置いていて、技の組み立て方や特性について学ぶことが多かったな」
「そうなんだ」
シンジの説明を聞いてサトシはなるほど、と納得した。
思い返してみれば、シンジは特性を生かして戦うのを得意としていた。そこから学び、サトシも少しずつではあるが、特性を利用することも多くなってきていた。
「地方によって学ぶことが違うって面白いね」
「ああ。だが、あまりにも違い過ぎていて、正直戸惑った」
「あ、これ知ってる。カルチャーショック、だ」
「そんなとこだな」
シンジは道徳的なものを苦手とするきらいがあるようで、彼の顔にも疲れが浮かんでいた。
その疲れた顔を、シンジが引きしめる。
「それよりも、聞きたいことがある」
「何?」
「今日の体育、そっちはどうだった?」
「「…………」」
シンジの質問に、サトシとシゲルは眼をそらした。
今日は体育が行われた。男女に分かれて授業は行われ、男子は持久走、女子は短距離走を行った。
逆行して少年から少女に変わってしまったシンジは女子の方で短距離走のタイムを計った。
身体能力は年齢の通りなのか引き継がれているのかわからないため、念のためにゆっくりと走ったつもりだったのだが、それでもクラスメイトを置き去りにしたという。
聞けば、サトシとシゲルもぶっちぎりの一位でゴールしてしまったらしい。
つまり、6歳のものとは思えない記録をたたきだしてしまったということだ。
「もしかしてさぁ……俺たちの身体能力、逆行直前のまま……?」
「「…………」」
サトシのこぼした呟きに、今度はシゲルとシンジが黙りこむ。
3人で顔を見合わせて、ふっとシンジが息を吐いた。
「各自、一旦家に帰って裏山集合」
「「了解」」
シンジの言葉に返事を返し、3人は別々の方向へと駆けだした。
各々準備をして、マサラタウンの裏山に集まった。
マサラタウンが一望できる、見晴らしのいい丘の上で、3人は車座で座っている。
「裏山にきたはいいけど、どうする?」
そもそも、元の身体能力がわからないんだけど?とシゲルが片眉を跳ね上げた。
「……崖から落ちても崖から突き出した岩や木を伝って無傷で降りられる程度だな」
「それは程度って言わない」
「俺だって無理だから、それ」
何でもないことのように話すシンジに、シゲルとサトシが真顔になる。
シンジの身軽さはポケモン並みである。タケシにエイパム並みと言われたサトシを超える身体能力を有しているのだから、押して測るべし。
シンジは平然といってのけたが、崖くだりが出来るのはこの3人の中で最も身軽でスピードのあるシンジだから為せる技で、2人はそう言ったものは得意ではない。一周回っての真顔である。
「俺は丸太振り回したり、ポケモンの技を喰らっても無傷でいられる程度かな~」
サトシはパワーと防御に自信のあるタイプである。それは自分よりの2倍以上の重さはあるであろうポケモンを抱えて平然としていたり、自身のポケモンに技を放たれても笑っていたりできることで、押して測れるだろう。
サトシのポケモンのレベルの高さを考えると、そのレベルの分だけあって、とんでもない威力を誇る。その威力を知っているシンジとシゲルは顔をひきつらせた。――よくあの威力の攻撃を喰らって平然としていられるな、と。
「というか丸太振り回すって……」
「りんごくらいなら片手で握りつぶせるけど、丸太振り回すのは無理かな……」
「……充分だろ」
さらっととんでもないことを言ったシゲルに、シンジがさらに顔色を悪くさせた。
「そういうシゲルは?」
「僕? 僕は一日中ケンタロスについて回っていられる程度の体力はあるつもりだよ」
「待て。それは程度とは言わない」
意外に思われるだろうが、この中で一番体力のあるのはシゲルだったりする。シゲルは主にフィールドワークを専門とし、一日中ポケモンを追いかけまわしている。
夜にしか活動しないようなポケモンもいるため、寝る間も惜しんで駆けずり回っているのだ、それは体力もつくというもの。今では一日中走り回って生活しているケンタロスと並走できる程度には体力がついてしまった。
シゲルの話を聞いたサトシとシンジは、もちろんドン引きした。
(並のトレーナーと比べれば十分超人ではあるが)体力とかパワーにはあまり自信のないシンジは特に。
(こいつらとこれから付き合っていくならば、もっと体力とパワーをつけなければ……)
元が男だということもあって、体力に自信がないというのはなかなかに屈辱的だ。その上でパワーも劣るとなると、なおさら。
シンジはこっそりと拳を握りしめ、決意を新たにした。
おまけ
「力が弱いって言っても、僕らの中で、ってだけで、普通に力は強い方だよね」
「それに、喧嘩とかめちゃくちゃ強いもんなー」
「…………」←ちょっと嬉しそう
((……何か可愛いな、こいつ))
眼つきの悪さからからまれることが多く、場数踏んでるシンジ
まずポケモンでどうにかする上に性格から喧嘩に発展しないサトシ
その気になれば社会的に抹殺できるシゲル
ただのけんかの強さはシンジ>>>サトシ>>シゲル>>>超えられない壁>>>モブ