聖母逆行






『真白の街へ』



 俺――シンジが病院を退院して、一カ月と少しがたった。
 青年と言ってもいい年齢だった俺は、とある事件を境に逆行という現象に巻き込まれ、もう一度人生をやり直しているところだ。ただし、過去が改ざんされているのか、俺が過去に戻った影響か、それとも並行世界と呼ばれる過去に戻ったのか。それはわからないが、俺は現在六歳の少女として生を送っている。俺が助けた、ジラーチの力によって。
 この世界では、俺は事故に遭って長らく眠った状態で合ったらしい。そのため兄のレイジは酷く過保護になり、学校に行くのはまだ早いだろう、といい、勉強は通信スクールで行うこととなった。
 一度履修している内容なので、内容はある程度覚えがある。しかし時折、こんな内容も習っていたのか、と思うものもあって、懐かしさ半分、目新しさ半分でなかなかに面白い。それに、今更外見年齢と同い年の子供の中に混じるのは抵抗があったため、同ゼ勉強をするのなら、こちらの方がありがたかった。
 ただ一つ、不満があるとすれば、兄貴が過保護すぎるということだ。
 外に出るのは許されているが、主に庭で過ごすように言いつけられていた。
 まァ、この世界で俺は事故に遭ったことになっているし、兄貴に取ったら俺は幼い子供であるから、心配なのはわからないでもないが。俺としては過保護もほどほどにしろ、と言いたい。
 そんな俺の不満が顔に出ていたのか、ある日兄貴が言った。


「なぁ、シンジ。仕事の関係でカントー地方に行くんだけど、一緒に行くか?」


 兄貴の言葉に、一緒に暮らすこととなったユキワラシと顔を見合わせる。
 守秘義務があるからないような教えてもらえなかったが、カントーのマサラタウンに行くのだそうだ。聞き覚えしかない名前に、ユキワラシとそろって瞠目した。


「……シンジ?」


 訝しげに眉を寄せる兄貴に我に返って首を振る。行く、と一言だけ言うと、兄貴が笑った。


「まァ、一人で置いていくのも不安だし、連れていくつもりだったんだけど」


 ……選択肢ないだろう、それ。俺の中にもいかないという選択肢は最初からなかったのだけれど。




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