真白の微笑み






「シンジ・・・。それはいったいどこで覚えてきたんじゃ?」


未だにシンジに抱きつくサトシをなでているシンジにオーキドが問う。
手を握って、斜め45度の角度で首をかしげて微笑むなど、どう考えても男を落とすための手法だ。
普段のシンジなら、絶対にやらない。というか考えつきもしないことだ。
一体、どこの誰に余計な知識を教えられたのかと、孫を心配する祖父のように尋ねれば、シンジは一瞬きょとりとして、それからああ、とうなずいた。


「私のあまりの女らしさのなさを嘆いたシロナさんにチャンピオン含む女性四天王やジムリーダーを各地方から集めてレクチャーされたんです」


女を武器として使う方法を。
淡々と述べるシンジからは服装や髪形を合わせて、どう見ても少年にしか見えない。
ただ、サトシの前だと花のような美しい少女にしか見えなくなるのだが。
オーキドは思わず頭を抱えた。

端正な顔立ちをしているシンジはただそこにいるだけで人目を引く。
それに行動が加わればなおさらだ。
所作が美しいだけに万人の目が彼女に向けられる。
思い出したようにシンジは言葉を続けた。


「ああ、でも、サトシ限定、という条件付きですけどね」


そう言って首を傾げるシンジは祖父の目線に立つオーキドにさえも愛らしいと思わせる。
孫ではなく、1人の少女として、だ。
ああまったく、厄介なことになったものだ、とオーキドは空を仰いだ。

頭上でそんな会話が繰り広げられているのだが、シンジをどうにかしてしまいたい衝動と葛藤していたサトシには知る由もないことだった。




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