激しい恋
「シゲルって2人の幼馴染なのよね? 昔からああなの?」
尋ねたのはセレナだった。セレナの示す先ではサトシとシンジが凶器を振りまわしている。遠い目をしてそれを一瞥してから、シゲルはセレナに向き直った。
「昔はそうでもなかったよ。片鱗はあったけど」
「片鱗? いつから?」
「出会ったときからかな」
それはもういくつの時だったかも忘れてしまうほどの幼い記憶だけれど、きっかけはシンジだった。
シンジに声をかけられたのだ。その時の第一声は、今でも忘れられない。
『その目、綺麗だな』
宝石みたいだ、と目を細めて言ったのは紫色の髪の少女だった。――シンジである。
瞳を褒められたのは初めてで、一瞬ほめられていることに気づかず、少し遅れてぎこちなくありがとうと言ったように記憶している。
『なぁ、その目、くれないか?』
『え? く、くれって……?』
『駄目か?』
『だ、駄目!見えなくなっちゃう!』
『じゃあ嘗めるのは?』
『い、痛そうだからやだ!』
『なら何ならいいんだ?』
心底不思議そうな顔をして手を差し出してくるシンジに、幼いながらも異常を感じて純粋に怖いと感じた。
そこに、新たな影が現れた。自分と同じ年ごろの少年――サトシだ。
『またかよ、シンジ』
心底呆れたような声をあげて、サトシはため息をついた。
『その子が困ってるだろ!』
『むぅ……』
拗ねたように頬を膨らませるシンジには申し訳ないが、サトシが来てくれて本当によかったと思った。押し問答を続けていたら、目をなめさせるくらいはさせてしまったかもしれない。
『シンジがごめんなー?驚いただろ?』
『う、うん……かなりね』
『俺、サトシ。こっちはシンジ』
『どうも』
『僕はシゲル。よろしくね』
『『よろしく』』
こうして彼らはで会ったのである。何とも数奇な運命だと、自分でもそう思う。
「とまぁ、こんな感じかな。出会いは割かしまともかな。今では考えられないくらいほのぼのとした出会いだと思うよ」
そう言って苦笑するシゲルに、セレナも苦笑した。
(会話がなければ、ね……)
その言葉を、セレナは何とか飲み込んだ。
おまけ
「サトシの隣にいるとシンジの関心はサトシに向かうから安全だけど、サトシの隣にいるということでシンジの嫉妬を買うし、一人でいてシンジの関心を集めればサトシの恨みを買うし……。僕はいったいどうすればいいんだ……!!!」
シゲルはそう言ってテーブルに突っ伏した。
――それでも2人から離れないんだね。そうセレナは思ったが、口に出すことはしなかった。