秋の宴の贈り物






どこまで行くのだろう?そしてどれくらいの時間がたったのだろう。
ヒトツキが腕に巻きつき、先導する。
反対の腕はゲンガーがつかんで離さない。
ギラティナはいつの間にかいなくなっていた。
人目を避けるためだろう。おそらく反転世界に帰ったのだ。
しかし、ジュペッタがいなくなった理由がわからない。
ジュペッタが姿を消す理由はないはずだ。
ゲンガーのように自分を驚かすために隠れているのだろうか?


「ゲェン?」
「ん・・・?ああ、いや、何でもない」


黙ったままだったシンジを不思議に思ったのか、ゲンガーがシンジの顔を覗き込む。
シンジはゆるりと首を振った。


「・・・ゲンガー!」


それをどうとらえたのか、ゲンガーがするりと手を離す。
少し前を言ったゲンガーが赤くなり始めた空に向かって”怪しい光”を放った。
何をしているのかとそれを眺めていると、今度は”シャドーボール”を放った。


「ゲェンガー!」


ぱぁん!
怪しい光にシャドーボールがぶつかり、光の粒が飛散する。
赤い空に金色の粒が散った。


「へぇ・・・」


シンジが感心したような声を上げた。
どうやら沈黙は暇から来るものだと考えたらしい。
シンジを楽しませようとしているのだろう。
どう?と伺うような視線がシンジに向けられた。


「綺麗だな。花火みたいだ」
「!!ゲンガ!」


シンジの称賛の声を受け、ゲンガーが照れたように頭を掻いた。


「ジュッペー!」
「!」


姿を消していたはずのジュペッタが、なぜか前方から現れた。
その手には何やら赤い帽子を持っている。
その後ろからは足音が聞こえるから、その帽子はその足音の主のものだろう。
まさか奪ってきたのか?とシンジが眉を寄せた。


「待て―!ジュペッター!」
「ぴかっちゅー!」
「・・・!?」


聞き覚えのある声にシンジが目を見開く。
ヒトツキ達を見れば、いたずらが成功したいたずらっ子のような顔で笑っていた。


「ジュッペ~!」
「見つけたぞ、ジュペッタ!俺の帽子、を・・・」


声の主がジュペッタを追いかけ姿を現す。
そして目に映った姿に相手方が息をのむ。
シンジはくつりと笑った。


「これが”礼”というわけか」
「ジュッペー!」
「ゲーンガー!」
「キシャシャ!」


何故彼らが知っているのかは置いておく。
ゴーストタイプは謎が多い。
しかしなかなかのいきな計らいに、シンジは笑みが浮かぶのを押さえられなかった。


「ありがとう」
「「「!!!」」」


ぽん、とジュペッタ、ゲンガー、ヒトツキの頭を撫で、ジュペッタの手から帽子をもらい、彼らの輪からそっと抜け出す。
未だに呆然としたサトシとピカチュウの前にたつと、ようやく彼らも驚きから解放された。


「シンジもカロスに来てたんだな!」
「ああ」
「あいつらはシンジのポケモンか?」
「いや、さっき知り合ったばかりだ」


その割には仲良さそうだけど、とサトシがゲンガー達を見やる。
ゲンガー達はシンジになでられたところに手を当て、照れ笑いを浮かべていた。
それに気づいたシンジがサトシの頭に帽子をかぶせ、視界を遮った。


「今日はハロウィンだろう?ポフィンをやったら、その礼にお前と引きあわされた」
「ああ、ハロウィン・・・。って、礼・・・?」
「ああ。その礼を無下にするわけにはいかないだろう?」
「・・・!」


荷物を投げ捨て、シンジが距離を取る。
その距離、バトルフィールド半分。
その先でかまえるシンジに、サトシが不敵に笑った。
帽子をかぶりなおし、サトシも距離を取る。
シンジがボールを投げ、サトシが肩に乗るピカチュウのために道を作った。


「ブーバーン、バトルスタンバイ!」        「ピカチュウ、君に決めた」
「バアアアン!!!」               「ぴかっちゅう!!!」


シンジの楽しげな顔に、ゲンガー達は顔を見合わせて嬉しそうに笑った。



その後、バトルの決着がつき、もう夜の更けるということで、2人は別れた。
結果はシンジの勝ち。経験とレベル差にはさすがの根性も勝てなかったのだ。
けれども強くなりたいという思いが伝わってくるほどの闘志を感じ、シンジが口元を緩めた。

さて、サトシを連れてきたジュペッタ達はと言えば、彼らはいつの間にか消えてしまっていた。
もう一度くらい礼を言ってもよかったのに。
気まぐれな性質はゴーストタイプ特有のものだろうか。
真面目な部類に入るユキメノコも、気まぐれな一面を持っている。


「(・・・礼に礼を言うのもおかしいか)」


肩をすくめてシンジは星の瞬く空を見上げた。
旅をしていれば、また会えるだろう。礼はその時言えばいい。
シンジはそうそうに眠りにつくことを決めた。


そんなゲンガーやギラティナ達の行方が知れるのは、翌日のことだった。



























ポケモンセンターにて、レイジさんとの会話

『ちょ、シンジ、お前っ・・・!何ゲットしてんの・・・!?』
「・・・は?」
『一気に4つもボールが転送されたから何事かと思えば・・・普通のポケモンに混じって何でギラティナとかいるわけ!?俺、思わず悲鳴あげちゃったんだけど!!?』
「(道理でボールが減っていると・・・!!!)・・・っ!兄貴!そっちにポケモンを送る!そいつら4匹、こっちに送れ!!!」
『是非そうして!俺の心の安定のためにもっっっ!!!』











ヒトツキの鳴き声だけゲーム仕様。
ちなみにこのギラティナは映画の子とは別個体設定。




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