離れてから気付くもの






ピカチュウ、俺の話、聞いてくれる?


「もちろんいいよ、ゴウカザル。どうしたの?」


今日ね、シンジが研究所に遊びに来たんだ。


「シンジが?元気そうだった?」


うん。元気そうだった。
エレキブルたちも、調子がいいみたい。


「そっか。よかったね」


うん、よかった。
あとね、今日、シンジが俺を見て、笑ってくれたんだよ。


「本当?」


本当だよ。意外かもしれないけど、シンジって意外とよく笑うんだよ。
サトシみたいに笑うんじゃなくて、目が楽しいとか、嬉しいとか、言ってくれてるんだよ。
目は口ほどに物を言うって、本当なんだよ。


「そうなんだ。今度会ったら、観察してみようかな」


ピカチュウならきっと、シンジの笑顔を見ることが出来るよ。
あ、みるっていうより、感じる、が正しいかな。


「・・・ゴウカザルは、本当にシンジが大好きなんだね」


サトシもシンジも、大好きだよ。


「僕もだよ」


好きな人を好きって言ってもらえるのって、嬉しいね。


「そうだね」


・・・それでね、ピカチュウ。


「うん、なぁに?」


俺ね、最近思うんだ。俺がシンジに捨てられたのは、俺が悪いんじゃないかって。


「・・・どうして、そう思ったの?」


俺さ、サトシにゲットされたばかりのころは、シンジが怖くて仕方なかったんだ。
だからサトシに拾われて、凄く嬉しかった。悪夢のような日々から抜け出せるって思った。
でも、サトシのポケモンになって、気付いたことがあったんだ。


「気付いたこと?」


うん。サトシとシンジは、あんまり変わらないってこと。


「・・・サトシは無茶させるけど、無理はさせないよ」


ううん。そうじゃない。それはわかってるよ。
そうじゃないんだよ。
2人は形は違うけど、ポケモンが大好きなとこは一緒なんだなって気づいたんだ。


「・・・シンジはポケモンに淡々と接してるように見えるけど、」


確かに淡々と接するのは否定できないよ。
でも特訓以外で無理を強いられたことはないし、シンジはいつだってポケモンたちを優先してくれた。
強くなりたいって想いとか、ポケモンのためなら何事も惜しまないところとか、そういうところが、凄く似てるんだ、あの2人は。


「サトシなんて命かけちゃうし、シンジも君を助けるのに必死だったね」


他は正反対って言っても過言じゃないのにね。
あ、あとね。シンジって料理も上手なんだよ。


「えっ」


俺たちの好みに合わせてポケモンフーズとかポフィンを作ってくれたりするんだよ。
俺たちみんな好みとかバラバラだったから、面倒だったと思う。
それでもちゃんと作ってくれたんだよ。
それを・・・タケシと一緒にポケモンフーズを作るサトシを見て、ようやく思い出したんだ。


「・・・ゴウカザル、」


俺、シンジのこと怖がってばっかりで、シンジの良いところを全然見てなかったんだと思う。
口が悪いところとか、修行が厳しいとか、そんなところばっかりに目がいってた。
シンジだっていっぱい良いところがあったよ。
ポケモンフーズを作ってくれたり、俺たちのことを理解しようとしてくれたり、俺がシンジの膝で寝行っちゃった時も、シンジは俺が起きるまで待っててくれた。
確かに修業は厳しかったし、怖いと思うような人だったけど、優しい人でもあったんだ。
シンオウからカントーなんって遠いのに、俺を気にかけて会いに来てくれて、俺のボールもまだ持っていてくれてるって、ドダイトスがこっそりと教えてくれた。
そんな人を、俺は裏切った。
シンジが俺を捨てたんじゃなくて、俺がシンジを見限ったんだ。


「・・・これは第三者としての僕の意見なんだけどね、」


・・・うん、


「どっちも悪かったんじゃないかなーって、思うんだ」


どうして?


「ゴウカザルも余裕を失って、シンジのいいところを見落としてしまって、結果見限った。シンジは観察眼が鋭いから、そんなゴウカザルに気づいたんだと思う。でも、気付いてたにもかかわらず、もっとほかのやり方があっただろうに、それをしなかったシンジも悪いと思うんだ。おあいこってことでいいんじゃないかな?」


それで、いいのかなぁ・・・?


「いいと思うよ。君はちょっと考えすぎ。サトシを見習いなさい。というかむしろ、君の思慮をサトシに分けてあげなさい」


さすがに無理だけど!!?


「幾らオールマイティなリーダーの僕にだって無理だよ。ゴーストじゃあるまいし」


ゴーストならできるの!!?


「あの子ならできるでしょ・・・。現トレーナーがあのナツメなんだから・・・」


ピカチュウ!?目が死んでる!!どうしたの!?無印時代に何があったのさ!!?


「ちょっとしたトラウマで・・・。ところで、ゴウカザル、」


うん?


「ちょっとは元気でた?」


・・・!!!
ちょっとどころかいつも通りだよ。
何か、考えるのがばからしくなってきちゃった。


「それくらいがちょうどいいんだよ。君はシンジのポケモンであると同時にサトシのポケモンで、僕らの仲間なんだから」


・・・!!うん!!!
ありがとう、ピカチュウ!


「ふふ、どういたしまして」
















リアル廃人の人って食べ物とかまで気を使っていそうだなと思って・・・。




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