シンジがチートでニューゲームする話






眼が覚めたら体が縮んでしまっていた。しかもどうやら、少女になっている。
何を言っているかわからないと思うが、全部本当のことだ。
俺――――――シンジが眠りから覚め、いつも通り体を起こそうとした時、やけに目線が低いことに気がついた。
手足を見るに5,6歳の子供。
このころの子供は性差がないので気付かなかったが、いつまでもパジャマでいるのもあれなので着替えようとして、自分が女になっている可能性に気づいたのだ。
着替えを物色していると、シンプルな服の中に、やけに異質なフリルのスカートが目について、それで自分が女になっていることに気がついた。
最初は愉快な(外面はいいので周囲から見れば好青年だが)兄のしでかしたことかとも思ったが、まさかと思ってみた引き出しの中身が、どう見ても女ものの下着だったので、その可能性は即座に消去された。
幾ら兄貴でも、ここまで悪質ないたずらはしない。


――――――これは夢だ、と思った。
けれども叩いてもつねっても、何をしても痛みは感じるし、目を覚ます気配はない。
当り前だ。これは夢ではないのだから。


「(とするとこれは人生をやり直す『逆行』とかいう現象か・・・?)」


そんな馬鹿な、と思いつつ、これが夢ではないと判明してからの俺の行動は早かった。
元の時代に戻れるか戻れないのかはわからないが、しばらくはこの時代に滞在することになるのだから、まずは状況の把握を試みたのだ。
正直に言うなら、この状況に置かれてここまで冷静な判断が出来た自分が怖い。
これも散々人をトラブルに巻き込んでくれたサトシの影響か・・・。



把握した状況はこうだった。
日付は俺のいた時代と同じ。ただし、月日は少し巻き戻っており、俺はどうやら6歳らしい。
そしてすでにトレーナーを引退した兄貴。
逆行前の時代なら家にいることのないはずの時期に兄貴がいて驚いた。
それとなく話を聞いてみると、育て屋を始めて1年近くたつこと。
育て屋という夢を見つけて、ジンダイさんとのバトルで引退することを決めていたこと。
トレーナーに未練はないことを知った。

――――――俺の知ってる過去と違う。
いや、女になっている時点で俺の知る過去とは違うものだ。
もしかしたら、パラレルワールドに逆行したということだろうか。
そんなオプションはいらない。


「(いや、待て。もっとポジティブに考えろ。逆行していいこともあるだろう?)」


チャンピオンの重責だとか、面倒な仕事は一切ない。
人目を気にして行動しなくてもいいし、ゆっくり過ごすこともできる。
まだ10歳になっていないので旅には出られないが、悪いことばかりではない。
ただ、庭に行ってみても自分の手持ちたちの姿が見えないことが、どうにも気に食わないが。
まだ6歳だから、ゲットしていないということなのだろう。どうせなら一緒に逆行させろよ。


「(とりあえず外に出て、そのことは一旦忘れよう・・・)」


















【速報】身体能力は17歳の俺のものと判明
どういうことだよ。ただまァ、このオプションはちょっとありがたい。




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