ピカチュウ・ロゼリア「止めてください」シンジ・ハルカ「だが断る」
「シンジの方がいい嫁に決まってるだろ!?」
「ハルカの方がいい奥さんだよ。君は何もわかってないね」
サトシとシュウが言い争いをしている。
彼らの相棒のピカチュウとロゼリアは、何度目になるかわからない2人のけんかをうんざりした目で見つめていた。
喧嘩の内容は決まっていつも「どっちの奥さんの方がいい奥さんか」というものだった。
つまりは嫁自慢対決だ。余所でやれ。
「確かにハルカはいい奴だけど!シンジは料理だってうまいし、家事全般お手の物だし、いつだって俺を支えてくれる最高の嫁だ!」
「確かにシンジさんは素敵な人だけど、ハルカはいつだって僕を笑顔で受け入れて、僕をいやしてくれるんだ。これ以上の奥さんはいないね」
「「何だとっ!?」」
バチバチと火花を散らしてにらみ合う2人に、ピカチュウとロゼリアは深い深いため息をついた。
そんな様子を、少し離れた位置から見守るのは、2人の自慢の嫁、シンジとハルカだ。
2人は自分たちの旦那の相変わらずの様子に苦笑していた。
「またやってるの?あの2人」
「ああ。もう何度目になるかわからないな」
「20回を超えたあたりから数えるのやめたもんね」
おそらく50回は超えたんじゃないだろうか。
出会えば必ず行われる恒例行事として扱えるくらいには繰り返される行為だ。
ここまで来ると、いい加減数えるのも馬鹿らしくなってくる。
シンジが肩をすくめ、ハルカが小さく笑った。
「・・・でもさ、嬉しいよね」
ハルカがシンジに笑みを向ける。
うっすらと頬を染め、穏やかに笑うハルカに、シンジも口元を緩めた。
「まぁ、悪い気はしないな」
「だよね」
例え比べようのないことでも。
途方のない戦いでも。
それでも、自分が一番だと、そう言って言い争ってくれるのは、なかなかに嬉しい。
周りには止めてくれ、と言われるが、愛する旦那が自分を褒めて、愛を叫んでくれるのだ。
もっと聞きたいと思うのは、妻として当然だろう。
ピカチュウたちには申し訳ないが、今「止めろ」と言ってくる人間は周りにはいない。
つまりは旦那の愛を存分に聞けるということだ。
「もう少し聞いていようか」
「うん!」
2人は楽しげに笑って、旦那たちの言い争いに聞き惚れるのだった。
(今度私たちもやってみるか?旦那自慢)
(それいいかも!やってみようよ!)
((やめてください!!!))