それだけではなかった理由






ピカチュウとゴウカザルはシンジを探していた。
サトシに、2人でシンジの元に言って欲しいと言われたからだ。
ピカチュウたちはシンジとともに外に出て、久々に会った仲間たちとともに遊んでいたため、研究所内での話は全く耳にしていない。
けれども、シンジのそばに言って欲しいと言ったサトシは、今にも泣いてしまいそうだった。
ただ事ではないと悟った2匹は、すぐにシンジを探し始めた。
彼は外に出ると、自分たちが目を離したすきに、どこかへ行ってしまっていたから、その行方を知らない。
だから2匹は、この広大な庭をしらみつぶしに探していた。


『あ、』


ゴウカザルが、声を上げる。
彼の視線の先には、シンジがいた。
更にシンジの視線の先には、木陰で昼寝をしているジュカインとマグマラシ、カビゴンと、そのお腹の上で眠るフカマルがいる。
その様子を見つめるシンジは、ひどく穏やかで、優しい目をしていた。


『・・・あんな目見るの、初めてだね』
『・・・うん、』
『なんだか、サトシに似てるね』
『うん、』
『・・・行ってみようか』
『!うん!』


2匹は、シンジに突進した。
シンジはいきなりのことに驚き、とっさに反応できなかったのか、ピカチュウたちの勢いに押され、ころりと地面に転がった。
その上に覆いかぶさって体をすり寄せると、払いのけられるかと思ったが、そんなこともなく、シンジはただただ戸惑っていた。
それをいいことに、2匹でシンジに甘えた。
頭をなでて、というように手にすりよれば、シンジは恐る恐る、まるで触れたら壊れてしまうようなものを触るように、そっと頭をなでてくれた。
すぐに離されてしまったのは残念だけれど、とても貴重な経験だろう。シンジに頭をなでてもらうなんて。

頭をなでるなんて、ごくごくありふれたふれあいだけど、シンジにとっては、大きな一歩に違いなかった。





















おまけ

エレキブル「ずるい」
ブーバーン「ずるいぞ、お前たち」
ゴウカザル「その黒いオーラやめて」
ピカチュウ「頭なでられたことくらいあるでしょう?」
エレキブル「・・・ある」
ゴウカザル「えっ!?俺、今日が初めてだよ!!?」
ピカチュウ「ゴウカザル、落ち着いて。なでられたことあるんならいいじゃない。というか僕は言い淀んだことが気になるんだけど」
エレキブル「・・・俺、昔、特性のコントロールが出来なくて、シンジをしびれさせたんだ」
ピカチュウ「頭なでてもらった時に?」
エレキブル「ああ・・・。それで、俺が頭なでられるのが嫌だったからしびれさせたんだと勘違いしたらしくて、それ以来俺に触れてくることもほとんどなくなったんだ・・・」
ゴウカザル「エレキブル・・・」
エレキブル「あのときのシンジの傷ついた顔は忘れられない」
ピカチュウ「つまり、ふれあいはお互いにとってのトラウマなんだね」
ゴウカザル「だからシンジ、あんなに頭なでるの渋ってたんだ・・・」
ブーバーン「エレキブルはまだいいだろ・・・。しびれさせただけなんだから・・・」
ピカチュウ「まさか、君も?」
ブーバーン「俺も特性のコントロールがうまくいかない時期があって、シンジをやけどさせたことがある・・・。折角、シンジが抱っこしてくれたのに・・・!!!」
ピカチュウ「そっか、2人とも相手に影響を及ぼす特性だもんね。僕は特性のコントロールはもともと出来てたから問題はなかったけど・・・」
エレキブル「泣きたい」
ブーバーン「同じく」
ゴウカザル「なんかごめん・・・」




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