繰り返すことを許された世界
「サトシは、放っておいてもポケモンマスターになるもんだと思ってたわ」
一人の少女が呟いた。
夕日色の髪が美しい少女だ。
隣で眠る少年、サトシの髪をなでながら言葉を漏らしたのは、彼の姉のような存在、カスミだ。
彼女が思うに、サトシには器がある。
ポケモンたちの心を開き、愛される才能。
大切なものを守るために強くなれるその精神。
伝説と呼ばれるポケモンたちとも気兼ねなく接するその度量。
まさしくポケモンマスターの器だった。
「でも、僕たちは見誤ってしまった」
そう言ってカスミの隣にたったのは、サトシの幼馴染のシゲルだった。
彼は険しい表情を浮かべている。
彼が言うように、彼らは見誤ってしまったのだ。
サトシは英雄だと。いつしかポケモンマスターになる存在なのだと。
そう信じて疑わなかった。
けれどサトシはただの人間。ただの子供だった。
「今度は、私たちが守って見せる」
そう言って拳を握ったのはセレナだ。
サトシを失って、守られてばかりいたことに気づいたセレナは、今度は自分が彼を守るく、決意を新たにした。
「しかし、守るばかりではそいつは成長しない」
カスミとは反対の、サトシの隣にたったのは、サトシの最大のライバルのシンジだ。
続けて、シンジの隣にシューティーが並んだ。
「僕たちが壁になる。そして、彼を強くして見せる」
「だから、僕たちと出会うその時まで、サトシを君たちに任せるよ」
「甘やかしてばっかで弱っちい奴になってたら罰金だからな!」
シンジたちに続いて、ライバルが並び立つ。
そうしてん彼らは振り返ることもなく自分の道を歩き出した。
それにならって、カスミとタケシを残して、サトシの未来の仲間たちも、サトシを待つべく、自分のいるべき場所へと帰っていった。
また会おう、サトシ。
未来のポケモンマスター。
今度こそ、今度こそ、君の夢がかなうところを見届けて見せるから。
今度こそ、君を守ってみせるよ。