久々にBWを見返して・・・






デントは今、ホウエンに来ていた。フィッシング大会が行われる街へ向かう途中のことだ。
デントはフィッシング大会に向けて、ポケモンセンター近くの釣り堀で練習していた。
すると近所の子供たちが釣り堀に遊びに来たのだ。
その子供たちはホウエンに生息していないヤナップに興味を持ち、近寄ってきたのだ。
そうして3人の子供たちと釣り好き仲間として息を統合させた。
折角仲良くなったのだから、と3人とポケモンセンターのバトルフィールドでバトルをすることになったのだが、ここで問題が起きた。
いつも通り。そう、いつも通りバトルをして、テイスティングをして、ことは起こったのだ。


「卑怯だぞ!」


1番最初にデントとバトルをした少年が、顔を真っ赤にさせて怒りだしたのだ。
それを皮切りに、バトルを観戦していた残り2人の少年たちも口々に叫び出した。


「バトル中にいきなり大声出して指示を遮るなんてありかよ!?」
「そんなのずるいよ!それにびっくりしただろ!?」


デントは困惑した。
こんなこと、今まで言われたことがない。
子供たちには卑怯だと騒ぎたてる。
負けたのが悔しかったのだろうか。まだ幼い彼らなら仕方ない。
なんとかなだめようと声をかけようとした時、騒ぎを聞きつけたであろうジョーイがこちらに駆け寄ってきた。

ジョーイに促され、デントはことの一連を話した。
すると話を聞いたジョーイは、顎に指をかけ、神妙にうなずいた。


「イッシュにはソムリエという仕事があるのね。こちらではブリーダーと呼ばれているのよ。仕事内容は少し違うけれど」


そうだ、とうなずきながらも、デントは内心首をかしげていた。
ソムリエとブリーダーは別物だ。
ブリーダーの方が少数で、マイナーな職業であるはずなのに、なぜそちらの仕事内容を把握していて、ソムリエの仕事がわからないのだろうか。
デントは不思議でならなかった。


「テイスティングというのは、あなたの仕事なのね?」
「はい・・・」
「私はソムリエという仕事がどんなものかわからないし、あなたたちのバトルを見ていないから、テイスティングの内容については何も言えないけど、それはバトル中にするものじゃないわね」
「えっ?」


ソムリエという職業がわからないというのはどういうことだろう。
そう言えば、3人の少年たちのも話したが、反応は薄かった。
この地方ではソムリエの方がマイナーなのだろうか。
それにしても、テイスティングをバトル中にするなというのはいただけない。
バトル中でなければ、いつするというのだ。
あの衝撃と感動を口にするのはやはり、新鮮なその時でなければ。
そんなデントの空気を感じたのだろう。
ジョーイは真面目な表情で言った。


「こちらにはソムリエという職業はないの。イッシュではソムリエがテイスティングを行うことは普通のことかもしれないから、気にしたりなんてしないだろうけど、こちらではそれは普通ではないの。テイスティングでバトルを中断させられたと思ったり、リズムを狂わされたと怒る人や、気にせずバトルを続行する人もいると思うわ。ソムリエという職業を知らない人が突然テイスティングをされたら、この子たちのように驚いて困惑するかもしれない。あらかじめ説明して許可を得ておくべきね。テイスティングを嫌がる人もいるだろうし」
「い、嫌がる人もいるんですか・・・?」


ホウエンにソムリエという職業がないことに、デントは衝撃を受けた。
自分の常識が崩れ、デントの顔が俯く。
その上、テイスティングを嫌がられることもあるという可能性に、心が折れかける。
そんなデントに、ジョーイは困ったように笑った。


「だって、あなたは今まで自分とポケモンが旅をしてきたところを見たわけでもない。自分とポケモンの間にどんなことがあったか何も知らない。他の人から見てもきずなが強いと言われて嬉しいという人もいるだろうし、たったそれだけで終わらせてほしくないという人もいると思うわ。言葉にすらしてほしくないという人もね」


私は1番最後かしら。
ジョーイはそう言って笑った。
デントは目からうろこが落ちた気分だった。
考え方は1人1人違う。感じることも違う。
だからこそ、自分はあの少年とともに旅を始めたのではないか。


「私もラッキーというパートナーがいるけど、仕事のパートナーであり友人でもあり、私自身何と表したらいいかわからないの。それを2人で見つけていこうと思ってるわ。私たちの言葉で見つけたいの。きっと私のほかにも、そう思う人はいると思うわ。世界は広いもの。それだけいろんな考え方が合って、いろんな思いを抱く人がいると思うわ。ここはあなたのよく知るイッシュとは違う。あなたが当たり前だと思っていることは、ここでは通じない。だからちゃんとソムリエという仕事をしていて、ソムリエとはどういうものか、きちんと説明して、ちゃんと理解してもらってからテイスティングを行う事を進めるわ」


折角仲良くなった子たちと喧嘩なんてしたくないでしょう?
そう言って、ジョーイは自分の後ろに隠れた3人の子供を見た。


「はい。・・・僕、この地方でも、ソムリエという職業が当たり前のように普及しているものだと思っていました。でも、ジョーイさんの言う通り、ここはイッシュじゃない。自分の常識や、そういった先入観を抜いて物事を見ていこうと思います」
「それがいいわね」


デントのわずかに明るくなった表情に、ジョーイが笑う。
デントはジョーイの後ろに隠れた3人の前にしゃがみこみ、3人と目を合わせた。


「さっきはごめんね?いきなり大声出してびっくりさせちゃったね。嫌な思いさせてごめん」
「・・・俺の方こそ、ごめん。ソムリエってどんな仕事かも知らないのに怒っちゃって・・・」
「俺も卑怯とか言ってごめん・・・」
「僕も・・・」


3人の子供たちと握手を交わし、デントは少年たちと仲直りを果たした。
今日できたばかりの友人と仲直りできたデントは、嬉しそうに笑った。


「・・・ねぇ、仲直りの印に、もう一回バトルしないかい?今度はテイスティングは無しで」
「!!うん!」
「あ!俺も!」
「僕もやりたい!」
「じゃあ、タッグを組んでバトルしようか!」
「うん!」
「さんせー!」


4人はジョーイにお礼を言って、バトルフィールドに入って行った。
ジョーイは穏やかな笑みを浮かべんそれから仕事に戻っていくのだった。
















「あ、そうだ、お兄ちゃん」
「うん?」
「さっきのテイスティングってやつね?あれ、難しい言葉ばっかりでわかんなかったから、もっと簡単な言葉で教えてほしいな」


俺たちのことほめてくれたんでしょ?
そう言って照れたように笑う少年に、テイスティングはソムリエ用語は使わず、自分の言葉できちんと説明しよう。
そう心に決めたデントだった。




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