2人のみこ 2
起き出したサトシ達が、ただならぬ表情をしているのを見て、セレナたちは不安に駆られていた。
2人は起き出してから最低限の会話しかせず、何かただ事ではない様子を醸し出していた。
しかし焦るでもなく落ち着いている。
けれども、荷物だけはしっかりとまとめ、いつでも出発できる準備をしていた。
「ど、どうしたの、2人とも・・・。なんか怖いよ・・・?」
「ん?ああ、ごめん。ちょっと用が出来ちゃってさ」
「用?」
「うん」
ユリーカの疑問に、サトシはうなずいたきり話さなくなった。
サトシは遠くを見つめるシンジの背中を見つめた。
ユリーカも、それにつられてシンジの背中を見やるが、サトシが何を見ようとしていつのか、わからない。
シンジは、ある一点を見つめていた。
「・・・私たちがつく前に、目覚めてしまったか・・・」
その視線の先では、土煙が立ち上っていた。
+ + +
痛々しい悲鳴が体を打つ。赤い大きな体は、苦しみに震えていた。
自分を見て逃げ惑う人間たち。恐怖に震えるポケモンたち。
羽ばたくたびに崩れ去る森の木々。
泣き叫んでいるのは人かポケモンか、それとも大地か。
――――泣きたいのはこっちの方だ
こんな破壊の力、望んでいないのに。
どうしてこんな力を得てしまったのが自分なのか。
――――サトシ!シンジ!どこにいるの!?
助けて!痛いよ、辛いよ、悲しいよ!
早く、早く、僕を眠らせて!!!
「イベルタル!」
鋭い声が叫ぶ。とても懐かしい声だ。
ああ、ようやく来てくれたのか、イベルタルは視界をにじませた。
――――やっと会えた!サトシ、シンジ・・・!!!
ドンカラスに乗ったサトシとシンジが、イベルタルの前に現れた。