世界一幸せな箱庭






サトシたちは、とある町のポケモンセンターにいた。
サトシは定期的に行っているオーキド研究所へ連絡を入れるために電話ボックスの前にたっている。
オーキドはいないため、助手であるケンジが電話に出たため、世間話に花が咲いていた。


『あ、そう言えばこの前、また密猟団に襲撃されてさぁ』
「え?また?」
『そうなんだよ。みんな好き勝手暴れて後片付けが大変なんだよねぇ』
「密猟団も懲りないなぁ」
『あ、そういえばさぁ、』

「「「いやいやいや!?ちょっと待って!!?」」」
『「ん?」』


さらりと流される問題発言に旅仲間のシトロン、ユリーカ、セレナが思わず声を上げた。
プライバシーだとか、そんなものは今、問題ではない。
オーキド博士の研究所が襲撃されたことに比べれば、そんなこと。


「研究所が襲撃された!?どういうことですか!?」
「っていうか、何で2人はそんなに落ち着いているの!?」
「研究所が密猟団に襲撃されたなんて大事件でしょう!?」
「どうって言われても・・・なぁ?」
『う~ん・・・。日常も日常だしなぁ・・・』
「「「そんなのが日常なのオーキド研究所!!!??」」」


驚く3人に、サトシとケンジは苦笑する。


『サトシのポケモンたちが中心になって庭の警備をしてくれているから、何の問題もないよ。安心して?』


ケンジの穏やかな笑みに戸惑いながらもシトロンたちはそれ以上何もいわずにうなずいた。


「あいつらはあの庭が大好きなんだ。だからあいつらは研究所を守るんだ。だから心配すんなよ」


サトシが優しげな笑みを浮かべるとセレナたちのこわばりが解ける。
少しだけ笑みを浮かべた。


「そっか・・・。サトシはみんなを信頼してるんだね」
「邪魔してごめんね?」
「ゆっくり話してくださいね」


そう言って3人はサトシたちから離れた。
そんな様子を見て、ケンジは静かに微笑んだ。

確かにみんなあの庭が大好きだよ。でもそれだけじゃないんだ。
あの庭でいい子に待っていれば、君が笑顔で「ただいま」というから。
大好きな君の帰る場所だから、みんなあの場所を守ってるんだよ。
君はそのことを知らない。知らなくていい。それが彼らの誇りだから。
だからね?君は何も知らずにここに帰ってくるんだよ。
そうして、ここに帰ってきたときは笑顔で「ただいま」と言って。
そうすれば、そこは世界一幸せな箱庭になるんだ。


『サトシ。僕はそろそろ仕事があるから、そろそろ切るね?』
「うん。仕事がんばれよ?」
『サトシもジム戦頑張ってね。後、定期連絡は忘れないように』
「わかってるって!」
『うん、じゃあまたね』
「おう!またな!」


僕もあの箱庭で、君の帰りを待っているから。







――――世界一幸せな箱庭の話。




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