2人のみこ 2
とても楽しい夢を見ていた気がする。酷く温かくて、優しい夢。
自分のために子守唄を唄ってくれる子供たちが幸せそうに笑っている夢。
自分もその輪の中で笑っていた。
ああ、何ていい夢。彼らのおかげだ。
彼らが自分のために子守唄を唄ってくれるから見れる夢。
もっともっと見ていたい。
彼らとも会いたいけれど、自分が目覚めることは、誰にも望まれていない。
自分自身にも。
だから目を覚ますことだけはしたくない。
けれどどうしてか、まぶたの裏に光が差し込んでくる。
目覚めなければ。目を覚ましたくないけれど、目覚めの時が来た。
眼を覚まさなければいけない。また眠るために。
彼らに唄を唄ってもらうために。
* * *
久々の繭の外は、どこまでも美しかった。
夢の中のおぼろげなものとは違う、鮮明な美しさ。
けれども自分が翼をはばたかせれば、それは無残にも壊されてしまう。
「きゃああああああああああああああああああああ!!!」
悲鳴が上がったのが聞こえた。
自分の見た人間の叫び声だろう。
何と悲しく痛々しい声。
それが自分の姿を見て、あげられている。
「イベルタル!イベルタルが目を覚ました!」
「カロスが・・・壊滅する・・・!!!」
絶望の声を上げる人間たち。怯え、逃げ惑うポケモンたち。
やはり自分は、この世界に望まれていない。
ああ、早く眠りにつきたい。そうすれば自分は幸せでいられる。
暖かい声で自分を包んで、優しく眠りにいざなってくれる彼らに、早く会いたい。
――――サトシ!シンジ!どこにいるの!?
――――早く早く、僕を眠りにつかせて、もう二度と目を覚まさないくらいに、深い眠りに!!!
「イベルタル・・・?」
眼を覚ましたシンジはぼーっとした頭で、幼子の名前を呼ぶ。
酷く悲しげな声で、呼ばれた気がしたからだ。
「泣いてるのか・・・?」
怖い夢でも見たのか?それとも、もう目を覚ましてしまったのか?
「早く、会いに行ってやらなきゃな」
いつの間にか目を覚ましたサトシが、シンジの髪をなでる。
シンジのうなずきに、2人は立ち上がった。