2人のみこ 2






翌朝、早朝。辺りが明るくなり、木々が上ってきた太陽に照らされる。
テントをすかして入ってきた朝の光に、シンジたちは自然と目を覚ました。
けれども、その中で、サトシだけがどうしても起きてこない。
意外と朝の弱いサトシは、朝日を直接浴びでもしない限り、なかなか起きてこないのである。


「サトシ起きてきませんねぇ」
「昨日、遅くまでシンジとおしゃべりしてたからよ。朝が弱いの自覚してるはずなのに」


もうすでに起き出し、朝食の準備を始めシトロンたちがサトシの寝ているテントを見やる。
唇を尖らせるセレナに、シトロンが苦笑した。


「でも、シンジはちゃんと起きてるね!」
「私は1人旅をしているからな。自分で起きるしかないし、身についてしまっているんだ」
「そうなんだぁ!」


凄いすごいと笑うユリーカにシンジが微笑を浮かべた。


「すいません、シンジ。サトシを起こしてきてくれませんか?」
「ああ、わかった」


申し訳なさそうなシトロンの言葉に、シンジは二つ返事でうなずく。
サトシが寝ているのはシトロンの青色のテントだ。
中に入ると、サトシはやはり寝ていた。


「サトシ、起きろ」


サトシのそばに腰をおろし、サトシの体をゆすって見るが、う゛ーと低く唸るだけで、起きる気配はない。


「サトシ、」


根気よく声をかけてみるも、やはり反応は薄い。


「起きろ」
「やだ・・・」
「もう、みんな起きてるぞ」
「まだ、ねむい・・・」
「もう朝だぞ。起きろ。今度は夜が眠れなくなるぞ」


サトシはぐずるばかりで起きる姿勢を見せない。
はぁ、とシンジがため息をつき、サトシの頬をつねった。
すると、サトシの目がうっすらと開かれ、うつろながらもシンジをとらえた。


「起きたか?」
「・・・」
「おい?」


サトシはシンジを見つめるばかりで起きようとしない。
しびれを切らしたシンジがサトシの頬をもう一度つねろうと手を伸ばすと、その手をサトシに引っ張られ、バランスを崩した。
うわっ、と小さく悲鳴をあげ、サトシの隣に倒れると、そのままサトシに抱きすくめられた。


「シンジもねよ・・・?」
「おい・・・!」


抱き枕状態にされてしまったシンジはそこまでして寝たいのか、と怒りと通り越してあきれた。
もう一度眠りの世界に入り込んでしまったサトシに、仕方ない、とため息を小橋、腕から抜け出そうともがく。
しかし力は思いのほか強く、抜け出せない。
そうやってサトシの腕と格闘しているうちに、シンジも疲れを見せて、あきらめて横になる。
シンジも昨夜はいつもより遅く眠りについたため、正直に言えば眠たい。


「(幸せそうに寝やがって・・・)」


眠気を押して置きだしたシンジは不満げにサトシの頬をつねるが、彼が起きる気配は、やはり見受けられない。


「(それにしても、暖かいな・・・)」


体温の高いサトシの腕に抱かれ、ついにはシンジも睡魔に敗北し、サトシともども眠りについてしまうのだった。






























「シンジ、戻ってきませんねぇ」
「サトシが起きないのかなぁ?」
「それにしては遅すぎない?」


朝食の準備を終え、テーブルに着いたシトロンたちがサトシ達が起きるのを待つ。
けれどもサトシたちがテントから出てくる様子は一切見られない。
3人は顔を見合わせた。


「サトシー?シンジー?」


セレナを筆頭に、3人がテントに潜り込む。
そして目に入った光景にセレナが絶句し、シトロンとユリーカがぽかんと口を開けた。

そこには幸せそうに眠るサトシとシンジが抱き合って眠っていた。


「サトシに引っ張られて抱き枕にされたみたいですね」
「サトシってあったかいから眠くなるよね!」
「もう少し寝かせておきましょう。何かかけるものは・・・」
「タオルケットがあるよ!」
「じゃあそれをかけておこうか」
「うん!」


微笑ましい兄妹のやり取りをしているシトロンたちの横で、セレナが顔を青くさせた。


「(ふ、2人は本当にただのライバルなんだよねぇ!!?)」


サトシがもぞリと動き、更にシンジを強く抱きしめた光景を見て、セレナは膝から崩れ落ちてしまうのだった。








(セレナ?)
(どうしたんですか?)
(何でもない!何でもないの・・・!)
((???))




7/14ページ
スキ