2人のみこ 2
朝食を食べ終えたサトシたちは森の中を歩いていた。
サトシが少し先を歩き、そのあとをシトロンたちがついて行くという形となっている。
どこで待ち合わせだとかは、一切聞いていない。
ただ、次の町の近くだ、と言われ、セレナがマップを広げようとすると、サトシは迷いなく森の中を歩きだした。
マップも持たずにすいすいと先に進んでいくサトシには、ひどく驚いたものだ。
しかも、その道が次の町、セキタイタウンに伸びているものなのだから、なおさら。
サトシはまっすぐ道を進み、時折立ち止まって、きょろきょろとあたりを見回したかと思うと、目を閉じて、又歩き出す。
そんなサトシにユリーカたちはただただ首をかしげるが、ピカチュウは特に気にした様子は見せない。
むしろ、あっち?こっち?と辺りを指差して、道を尋ねているようだった。
「近いぞ、ピカチュウ!」
「ぴっかぁ!」
サトシがまれにみる嬉しそうな笑顔を浮かべる。
ピカチュウも、いつになく嬉しそうだ。
いつもと違うサトシばかりで戸惑うも、サトシが楽しそうならまァいっか!というのがシトロンたちの考えである。
目的の人物がいる場所が近いのか、サトシが走り出す。
待ちきれなくなると走り出すのはサトシの癖だ。
しょうがないなぁ、とセレナたちも走りだす。
サトシ一行は、いつの間にか森を抜け、草原に差し掛かっていた。
地平線の先まで続いているかのようにみまごう草原。
さらさらと風邪に流れる草が美しい。
その中に、ぽつりと一つ、紫色があった。
それは一人の少女で、彼女は懐かしそうに眼を細めていた。
そんな少女が、サトシたちに気づいたのか、少女はゆるりと顔を上げ、サトシたちを見やった。
優しく弧を描く目には、確かな愛情があった。
暖かな目に見つめられ、たまらずにサトシが駆けだした。
「シンジ!」
サトシが少女――――シンジに1思い切り抱きついた。
シンジはよろけて倒れそうになるが、サトシが支える。
シンジは自分が倒れそうになったことには気にも留めずに、サトシを抱きしめ返していた。
「会いたかった、シンジ・・・!」
「ああ、私もだ」
自分を受け入れ、包み込んでくれる両腕に、サトシが笑った。