恋は戦争
ジャンヌタウン。
レンガで造られた建造物が立ち並ぶ小さくも美しい街。女性限定バトル大会『ワルキューレ』が開かれる街だ。
大会は3日間にわたって行われる。と言っても初日はエントリーで潰れ、大会が本格的に始まるのは2日目からだ。
2日目は予選。3日目が本選だ。
ちなみに会場はジャンヌタウンを統治する女王の城である。予選は広大な庭で。本選は城内のバトルフィールドで行う。
受け付けはポケモンセンターで行われ、エントリーを終えたシンジたちはそのままロビーに留まっていた。
「やるからには優勝! 絶対にバシャーモナイトをゲットするかも!」
「燃えてるなぁ、ハルカ」
「当然かも!」
コンテストをより有利にすることが出来るメガ進化。そのアイテムを手に入れるためにハルカは優勝を目指して闘志を燃やしている。
楽しそうに笑ったサトシが、ただ楽しいのと違った笑みを見せた。
「でも、シンジは強いぜ?」
「――ええ! それでも勝つわ!」
サトシの挑発的な言葉にハルカはさらに闘志を燃えたぎらせたようだった。
サトシが嬉しそうに眼を細めた。
「ねぇねぇ、ハルカさん」
「ハルカでいいよ」
ユリーカがハルカの服を裾を引く。
弟と同じくらいの背丈のユリーカに気がついて、先程までの強気な笑みではなく、柔らかい笑みを向けた。
「どうしたの?」
「うん、あのね? ハルカの言ってるコンテストってなぁに?」
首をかしげて聞かれた言葉に、ハルカだけでなくシュウも驚きに目を見開く。
「カロスにはコンテストはないのかい?」
「はい。噂には聞いたことがありますが、実際に見たことはありません」
「そうなんだ……」
シュウの問いに尋ねたシトロンが申し訳なさそうに苦笑する。
初めて知った事実にハルカは感心したような声をあげ、それから気を取り直してユリーカに向き直った。
「コンテストっていうのは、いかにポケモンを魅力的に見せるかを競う大会のことで、その大会に出場することを目的に旅をしている人のことをコーディネーターっていうのよ!」
「そうなんだぁ!」
ユリーカがキラキラと目を輝かせる。それに嬉しそうにハルカが笑う。
「ハルカはそのコンテストに優勝するためにバシャーモナイトをゲットしようとしてるの?」
「ううん。優勝は何度もしてるの」
「えっ!? そうなの?」
「コンテストは他の大会と少し違っていて、コンテストで優勝してコンテストリボンというリボンをゲットしなければならないんだよ」
驚きを隠せないセレナにシュウが補足を加える。それを受けて、シトロンがシュウに問うた。
「ジムバッジみたいなものですか?」
「そう。リボンを5つ集めると、グランドフェスティバルというコンテストの最高峰の大会に出場できるんだ」
「そしてグランドフェスティバルで優勝すると、トップコーディネーターの称号が得られるの! 私たちはトップコーディネーターを目指して旅をしているのよ!」
「それが2人の夢なんだよな!」
「「ああ/ええ!」」
シュウの説明を引き継いだハルカが満面の笑みを浮かべる。
サトシの言葉には、シュウも笑みを浮かべた。
夢を追いかけている2人はキラキラと輝いている。夢を追う人はどうしてこうも輝いて見えるのか。
(夢、か……)
笑顔があふれる輪の隅っこで、セレナが一人うつむいた。