恋は戦争・番外編






買い出しを終え、ポケモンセンターに来たサトシ達は、そろって首をかしげていた。
その視線の先にはソファに座ったシンジと、その膝の上に横向きになって座るユリーカがいる。
こちらにも気づかずに楽しそうに談笑している。


――――あれ?あの2人ってあんなに仲良かったっけ?


と、3人そろって首をかしげているのだ。
今まではユリーカの一方通行に近い形だったが、今日の2人はお互いが歩み寄っているように感じる。
3人で姉妹のような2人を眺めていると、サトシ達に気づいたのか2人そろってサトシたちに目を向けた。


「あ、お兄ちゃん!サトシ、セレナ!お帰りなさい!」
「お帰り」
「あ、た、ただいま」
「た、ただいま、2人とも」
「は、はい、ただいま」


満面の笑みのユリーカと普段通りのシンジに出迎えられ、サトシたちはぎこちなく笑みを浮かべた。


「悪いな、任せてしまって」
「気にすんなって!それより手の治療は?」
「順番待ちだ」
「そっか」


眉を下げたシンジにサトシが慌てて首を振る。
そしてシンジの右手に何の変化も見受けられないことに気がついて、サトシが首をかしげた。
シンジは答えとともにカウンターへと目を走らせた。サトシもそれを追って目を向ける。
そして納得した。あわただしく駆け回るジョーイとプクリンがその忙しさを物語っている。


「まだ時間かかりそうだなー」
「ああ」
「あ、僕たち部屋に荷物置いてきますね」
「すぐ戻ってくるから」
「ユリーカも手伝う!サトシ!シンジのことお願いね!」
「おう!」


ユリーカの案内のもと、シトロンとセレナが宿泊スペースへと向かっていく。
それを見送って、サトシがシンジの隣に腰を下ろした。


「なぁ、シンジ。なんかユリーカと仲良くなってない?」
「そうか?」
「うん。・・・何かあった?」


きょとんと首をかしげるシンジに、かわいいな、と思いつつ尋ねれば、シンジは手元に視線を落とした。
けれども特に表情の変化はなく「少しな」と一言つぶやいただけだった。
何もなかったとは言わないけれど、たいしたものではないのかもしれない。
シンジがそれを感じさせないだけかもしれないが。
サトシもそれ以上は聞かず「そっか」とだけ呟いた。


「・・・良いな、あんな妹」
「ユリーカのこと?」
「ああ」
「いい子だもんな、ユリーカ」
「・・・もし、私たちの間に娘が生まれたら、あんなふうに育ってほしいな」
「ごふっ!!!」


ほのぼのとした空気に包まれていたはずなのに、そこにシンジが爆弾を落とした。
サトシが盛大にむせたのに驚いてシンジが目を白黒させる。
ごほごほと咳き込むながら、それを横目で見たサトシは確信した。
ああ、これは気付いていないな――――と。


「どうした?」
「ごほっ・・・。お前、自分の発言顧みろ。んで、自覚してくれ」


自分がどれだけとんでもないこと言ったのか。
耳を赤く染めて目をそらしたサトシに、シンジは首をかしげた。
そして自分の言った言葉を反芻して、あ、と小さくこぼした。
そこからの変化は目まぐるしかった。
見る間に冷静さを失い、頬どころか、耳まで熟れたトマトのような色になり、慌ててソファから飛びのいた。


「わっ、忘れろ!全力で!!」
「忘れられるかっ!!!」


この後ロビーに戻ってきたシトロンたちに、真っ赤になったシンジの顔を見られ、熱まであるのかと騒がれるのだが、それはまた別の話。



















(ったく・・・。シンジってたまにとんでもないこと言うんだから、)
(しかも無自覚と来た、)
(でも結婚するんだから、いつか子供を授かるんだよな・・・)
(シンジ似の女の子だったらいいなぁ・・・)
(俺似の男の子だったら確実にシンジの取り合いになる自信あるし・・・)
(幾ら息子だからってシンジを取るのは許せないしな)





うちのサトシは独占欲強い




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