恋は戦争
「カメラのファインダー越しでやっと気付くことがあるように、ポケモンといることで初めて見えてくるものもあるわ。ポケモンとのきずなを深めながら、これからもがんばってね」
「「はい」」
ハクダンジム前にて。
外まで見送りに来たビオラが、激励の言葉を述べる。
2人はそれに返事を返し、ビオラを満足そうにうなずかせた。
「サトシ君、シンジちゃん。次のポケモンジムを目指すのよね?だったらショウヨウシティのショウヨウジムがいいんじゃないかしら?」
「ショウヨウジムですね、分かりました」
次のジムの名を上げるパンジーに、サトシがうなずく。
パンジーの腰の荷物の上から、エリキテルがサトシに飛びつく。
「エッリ!」
「元気でな、エリキテル」
「ぴかぴぃか」
「エリエリー」
エリキテルの別れのあいさつにサトシとピカチュウが笑みを浮かべる。
シンジもそっと指で頬をなでてやると、エリキテルがその指に擦り寄り、大きく手を振った。
「それでは僕たちはこれで」
「ありがとうございました!」
「さようなら!」
「ビオラさん、パンジーさん、エリキテル、ばいばい!」
サトシ達が別れの言葉を述べながら歩き出す。
シンジも軽く頭を下げて、それに続いた。
「また会いましょー!」
そう言って手を振るパンジーの声を背中に受けながら、サトシたちは新たな旅路に向かって歩き始めたのだった。
「それで、セレナはこれからどうするんだ?」
「え?私?」
ハクダンシティの街中を歩きながら、成り行きでついてきたセレナに、サトシが声をかける。
声をかけられたセレナは驚いたように目を瞬かせていた。
あ、やばい。
シンジは直感した。
これはフラグだ。超絶鈍感を発揮して、無自覚にたらしこんでしまうパターンだ。
自分と同じようにそれを察知したピカチュウが、困惑したようにサトシの肩で右往左往している。
「俺たちと一緒に行かないか?」
ほらやっぱりぃぃぃぃぃ!!!
膝から崩れ落ちそうになっているシンジに気付いたピカチュウがシンジに駆け寄る。
ピカチュウを抱き上げて、力いっぱい抱きしめた。
「もう、ピカチュウを恋人にしたい・・・」
そう呟いてうなだれるシンジの声は、誰にも効かれず、アスファルトの中に吸い込まれていった。