恋は戦争
「うおおおおお!カロス地方ー!マサラタウンのサトシが来たぞー!」
「ぴかっちゅー!」
飛行機での旅を終え、丸1日かけてやってきたカロス地方。
飛行機を降りる際、サトシがカロス地方に向けて叫んだ。
「何やってるんだ、お前は・・・」
「どうしたの、急に」
サトシの後に続いて外に出たシンジが呆れたような声をかける。
パンジーは楽しそうに笑っていた。
そんな2人を振り返り、サトシは満面の笑みを浮かべた。
「カロス地方にあいさつです!これ降りたらカロス地方、記念すべき第一歩ですよ!」
「ぴぃーかぁ!」
こいつは土地に向かってまで挨拶するのか、と半ば呆れ、サトシらしいと微笑ましげにサトシを見る。
シンジの優しげな瞳に嬉しそうに笑い、サトシが階段を降りようとする。
しかし、その前に初めてみるポケモンが空を舞っていることに気付き、立ち止まった。
「見たことないポケモンだ!」
「おい、前を見ないと・・・」
「え、うわ、うわああああああああああああ!!?」
ドッシーン!という派手な音を立てて、サトシが階段から転がり落ちた。
ピカチュウはちゃっかりとサトシから飛び降りており、上からサトシを心配そうに見つめていた。
「(・・・前途多難そうだな)」
シンジがため息をついて肩をすくめた。
「ホントごめん!」
パンジーが手を合わせて謝罪する。
そんなパンジーの前にはうなだれるサトシがいる。
何故こんなことになっているのかというと、理由は2つある。
1つ目はパンジーの妹のジムが、ここミアレではなく、ハクダンシティにあるということ。
2つ目は、そのジムリーダーがジムを留守にしているということが挙げられた。
更にその妹は、一度出かけたらなかなか帰ってこないというため、すぐにはジム戦が出来ないというのだ。
新天地での出鼻をくじかれ、サトシは肩を落とした。
「この街にジムはないんですか?」
「え?」
シンジの疑問に、パンジーがぱちくりと目を瞬かせる。
それから、あ!と手を打った。
「そうだわ!ミアレシティにもジムがあるわ!その熱い気持ち、ミアレシティのジムでぶつけてみたらどう?」
「この町にもジムがあるんですか!?」
「ええ。教えてあげるわ。こっちに来て」
空港のロビーを出てすぐそこに、街の地図が設置されていた。
パンジーがその中央を示す。
「えっと、これね。ミアレジムはプリズムタワーの中にあるのよ」
「プリズムタワーですね。ピカチュウ、最初のジムはミアレジムで決まりだ!」
「ぴかっちゅう!」
サトシとピカチュウは、この街にもジムがあることを知り、元気が回復したようだ。
2人とも拳を握り、闘志を熱く滾らせている。
「私とはここでお別れになっちゃうけど、あとは大丈夫かな?」
「何とかなりますよ!俺にはシンジがついてますし」
「・・・人任せかよ」
「ふふ。確かにシンジちゃんはしっかりしてるし、シンジちゃんがいれば安心ね。じゃあ、改めて、ようこそ!カロス地方に!」
パンジーが満面の笑みで両手を差し出す。
サトシとシンジがその手をしっかりと握り、パンジーを見据えた。
「ここまでありがとうございました、パンジーさん!」
「お世話になりました」
「こちらこそ楽しかったわ!」
「俺もです!」
しっかりと握手を交わし、どちらからともなく手を離した。
「パンジーさん、それじゃ」
「気をつけて!」
大きく手を振るパンジーに見送られ、サトシが走り出す。
それに続いて、シンジも走りだした。
プリズムタワーを目指して走る2人は、初めてみる町並みやポケモンたちに目を奪われていた。
今まで旅した地方で見かけたポケモンも多数いるが、見たことのないポケモンもいて、サトシは頬を上気させていた。
シンジも顔には出さないものの、気分は高揚していた。
「おい、あれじゃないか?」
街中を走り抜ける途中、シンジの視界に大きな白いタワーが映る。
おそらく、街の中心にそびえるそれは、パンジーの言うプリズムタワーだろう。
「きっとそうだよ。ジムはあそこだな!」
「ぴぃーか!」
タワーの大体の位置を確認し、またひた走る。
タワーの真下まで全力で走り、そこでようやく足を止めた。
近くに来たら、その大きさがよくわかる。
首をまっすぐにそらさなければ、てっぺんが見えない。
「いよいよだぞ!俺たちの新しい挑戦の始まりだ!」