そんなのは建前で






サトシとシンジは、広い芝生が広がる公園にいた。
人もおらず、ポケモンを出しても迷惑にならにだろうと判断した2人は、空に向かってモンスターボールを投げた。


「みんな、出てこい!!」


ピカチュウにリザードン、ツタージャ、ミジュマル、チャオブー、ズルッグ。
ジュカイン、ゴウカザル、オオスバメ、フカマル、ブイゼル。
ドダイトス、エレキブル、ユキメノコ、ドンカラス、リングマ、ブーバーン。
計17匹のポケモンを外にはなった。
ポケモンたちの顔合わせは初めてだが、昨日のバトルをボールの中から見ていたポケモンたとは、それぞれ同じタイプのポケモンを見やった。
それから、出会ってからずっと、自分の主人たるサトシと親しげにしているシンジを見つめる。


「みんな、紹介するぜ!俺のライバルのシンジだ!」
「トバリシティのシンジだ」


自己紹介をしたシンジに、ポケモンたちもそれぞれ自己紹介を始める。
一通り自己紹介が終わると、シンジはリザードンを見つめた。
彼もこちらを見ていたらしく、ばちりと視線がかちあった。


「・・・強いな」


呟かれた言葉にサトシが微笑んだ。


「リザードンは俺の最初の6体なんだ。普段はジョウトで修行してるんだけど、今は手持ちに戻ってもらってるんだ」
「・・・リザードンがいるとわかっていたら、リザードンともバトルしたんだがな」
「シンジが万全な時にやりたいよな」
「・・・どういう意味だ」
「昨日、ちょっと無理しただろ。今日のバトルはキレがないぞ」
「・・・ちっ」


シンジがサトシから目をそらし、舌打ちした。
昨日、サトシとのバトルで自分の体調を顧みずにバトルした結果、翌日である今日、あまり調子が出ていなかった。
本調子でないままバトルしても圧勝しているあたり、さすがである。
大丈夫?というようにポケモンたちが集まってくる。
大丈夫だ、という意味を込めて、近くにいたブイゼルの頭をなでた。


「あ、まだ紹介の途中だったな」


サトシがそう言ったと同時に、サトシがシンジの肩に手を回し、シンジの肩を抱き寄せた。
油断と、予想外の行動に、シンジはあっさりとサトシに抱き寄せられた。
驚きに目を瞬かせたのはシンジだけではなく、ポケモンたちも同じだ。
そんな中、サトシが満面の笑みで言った。


「シンジは俺の婚約者でもあるんだ!」


サトシがそう宣言した瞬間、シンジの顔は真っ赤に染まり、イッシュでゲットされたポケモンたちかと、サトシの元を離れていたリザードンから、すさまじい絶叫が上がった。
言葉の意味を分かっていないズルッグだけが、首をかしげていた。



































『婚約者ってマジかよ?』


そう尋ねたのはリザードンだ。


『マジだよ』


そう答えたのはピカチュウだ。
リザードンの驚いたような顔を見て、くすくすと笑みを漏らしている。


『あのサトシが婚約者ねぇ・・・』
『あの葉っぱ女がよく許したな・・・』
『最初は認めてなかったみたいだけど、絆されちゃったらしいよ』
『・・・あの婚約者もサトシと同じで何か特性でも持ってんのか?』
『あー・・・かもね』


ピカチュウが苦笑してサトシとシンジを見やる。
それにつられるようにして、リザードンも2人を見た。

どうやらユキメノコに付きまとっていたらしいミジュマルが氷漬けにされている。
しかしユキメノコは何でもなさそうにシンジの隣に座り、涼しい顔をしている。
チャオブーが氷を溶かすのを、サトシは苦笑し、シンジはあきれたように眺めていた。

そんな様子を微笑ましげに眺めていたピカチュウがふと思い出したかのようにあ、と声をもらした。


『どうした?』
『うん、あのね。どうやら、伝説のポケモンのうち、数匹が2人の婚約を認めてないらしいんだ』
『ああ?』
『君は認めてあげてね』


そう言ったピカチュウはどこか、憂いを秘めていた。


『・・・サトシ自身が選んだっつーんなら、認めるしかねぇだろ』


そう言って、リザードンはたちあがった。
そうして、サトシとシンジの後ろにたち、ぎゅっと2人を抱きしめた。
2人が驚くが、お構いなし。
2人を抱きしめたまま、2人を抱えて座り込んだ。
そんなリザードンを見て、ピカチュウも目を瞬かせ、それから笑った。


『ありがとう、リザードン』


















(・・・おい、ピカチュウ。何を笑っている)
(ぴーかちゅーう(何でもなーい))
((やっぱピカチュウっていい性格してるよなー・・・))




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