そんなのは建前で
みんなと別れて3人になったサトシたちは、さて、どこの店に入ろうかと町並みを見回していた。
幸いにも、どの店もすいているようだった。
と、カスミが踵を返した。
「じゃあ、私は1人で食べるから」
「「え?」」
わざわざ他と別れて3人になったのに1人で食べるとはどういうことだろう。
不思議そうに、かたやいぶかしげに霞を見れば、彼女はこちらに背を向けたままひらひらと手を振った。
「2人の時間なんて全然取れなかったでしょー」
そう言ってカスミはすたすたともと来た道を歩いて行ってしまった。
取り残された2人はお互いの顔を見合わせた。
「気、使わせちゃったのかな・・・?」
サトシがぽつりとつぶやいた。
2人の時間がほしくなかったかと問われれば、答えはもちろん否だ。
しかしながら、2人は一緒にいられればそれでいいとも思っている節がある。
それを見越したうえで、カスミはサトシとシンジを2人にしたのだろう。
「・・・後でお礼言わなきゃな」
「そう、だな」
サトシの言葉にシンジがうなずいた。
そうして、どちらからともなく手を握った。
「何か買って外で食おうぜ?天気もいいしさ」
「ああ」
そう言って、嬉しそうに2人が歩き出したのを、サトシの方で、ピカチュウが微笑ましそうに眺めていた。