そんなのは建前で






シューティーはサトシたちと別れ、1人ポケモンセンターの食堂で少し遅めの昼食を取っていた。
そろそろ人がはけてきてもいいような時間なのだが、なかなかの人の込みようだ。
特に食堂に据え付けられたモニターの周辺はかなりのにぎわいを見せている。
はて、今日は何か面白い番組でもしていただろうか?とわずかに首をかしげて見せた。
しかし思い当たる節もなく、シューティーはそれ以上の反応は見せず黙々とはしを進めていった。


「(そんなことより・・・カスミとシンジという2人のことだ・・・)」


彼女たちが自分たちにやけに詳しく、そして厳しいのは誰が見ても明らかだった。
彼女らが自分たちに詳しいのはサトシから聞いたということで納得が出来る。
自分たちに厳しいのも、納得できないわけではない。
多少なり、こちらに非があるのは、シューティーも認めている。


「(でも・・・なんだか妙に説教じみているというか・・・)」


改心させるような、考えを変えさせられているような・・・。
そこまで考えて、シューティーは首を振った。
彼らは浮き彫りになった非を認めただけだ。
きっと彼らの心のどこかに罪悪感のような胸につかえるものがあったのだろう。
変わらなければならないという考えが。


「(僕は、僕の道を信じて進むだけだけど、)」


そう心の中で呟いて、シューティーはコップの水を飲み干した。





『――――勝者、マサラタウンのサトシ!』


ぴたりとシューティーの手が止まった。
映像は見えないが、モニターの方から声が聞こえる。


『サトシ選手、ベスト4進出です!』

わあああああっ・・・――――――――


ごとり、とコップがテーブルを転がる。
幸いにも水はたった今なくなったところだ。
水でテーブルを汚すこともなく、軽くなったコップが割れることもなかった。
コロコロと転がるコップはトレイにことりとぶつかった。
その音が合図になったようで、シューティーは食べかけのトレイをそのままに、食堂を飛び出して行った。




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