そんなのは建前で






昼食はそれぞれ、別々の場所で食べることになった。
シューティーは騒がしいのは嫌だと、1人でポケモンセンターに。
デントとカベルネは2人で話したいことがあるからと近くのレストランに。
コテツやベルがサトシたちと食べたいと言っていたが、カスミが久しぶりに会った者同士でゆっくりと話したいからと3人で食べることに。
残る5人は特に理由もないので5人で食べることとなった。
5人はわざわざ輪の中から抜けた者たちと同じ店に入るのは忍びないと、近くのファーストフード店に入ることにした。
それぞれが順に注文を済ませ、ようやく全員が席にそろう。
誰ともなく食べ始め、談笑していると、ふいにアイリスが不機嫌そうな声を上げた。


「何か、あの人たちって私たちに厳しくない?」


アイリスが不満げな表情でジュースを啜る。
ズズーと音を立てるのに対して行儀が悪いとしてしてやれば、アイリスはストローから口を話したが、不機嫌な表情は変わらない。
ケニヤンたちはアイリスの言葉に互いに顔を見合わせた。


「そんなことないと思うぜ?」
「考えすぎだよ~」
「たとえそうだとしても、言ってることは正しいと思うけどな~・・・」


ケニヤンはあっけらかんと返すが、ベルとコテツは苦笑気味だ。
前者は本当にそう思っているだけか、わざとそういう風に見えるように装っているか。
後者は身に覚えがないわけではないが、相手が正しいと思っているからこその苦笑だ。


「(厳しくて当然だと思うんだけど・・・)」


というのは、ラングレーの意見である。
自分たちの態度はひどいものだったとラングレーは思う。
名誉棄損もいいとこだ。
サトシに対しても、随分ひどいことを言ってきた。
自分だって、親しい人があんなふうに言われたら、嫌悪感が態度に出たとしてもおかしくはないだろう。


「(っていうかこの子気付いてないの・・・?)」


ラングレーはぞっとした。
アイリスの言葉ははたから聞いている自分でさえ暴言じみていると感じていた。
その言葉を浴びせられているサトシには、どのように聞こえていたのだろう。
カスミやシンジ、ひいてはサトシのことまでねちねちと愚痴をこぼすアイリスを見て、ラングレーは寒気を覚えた。


「(サトシ・・・。あんた、シンジたちと一緒にカントーに帰った方が楽になれるんじゃないの・・・?)」




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