そんなのは建前で
「とにかく、私たちはポケモンを預けてくる」
「わかったわ。ポケモンを預けたら、シンジは私のところに来て」
「俺は?」
「すぐ終わるから、近くで待ってて」
「わかった」
そう言って2人はカスミと別れ、カウンターにいるジョーイのところに向かう。
フィールドを壊してしまったため、罪悪感からか、足取りが重い。
「あら、いらっしゃい。ポケモンの回復ね?」
「はい、よろしくお願いします」
「俺のもお願いします」
「はい、かしこまりました」
そう言って、ジョーイがボールを受け取る。
「ラッキー!」
「タブンネ~」
受け取ったボールは、奥から出てきたラッキーとタブンネに渡される。
自分たちにとってはタブンネよりもラッキーの方が見慣れているが、この地ではジョーイの助手はタブンネが常識だ。久々に見たラッキーの姿に、サトシとシンジが目を見開く。
「ラッキー!?」
「何故、イッシュに・・・」
にこやかに笑うたまごポケモンに、2人が顔を見合わせる。
そんな2人を見て、ジョーイがくすくすと笑った。
「びっくりした?」
「ジョーイさん」
「私、もともとはジョウト地方でジョーイをしていたの。イッシュに転勤になった時に、一緒に連れてきたのよ」
「それでイッシュにラッキーが・・・」
「ラッキーなんて久しぶりに見たな~」
いたずらっ子のような笑みを浮かべたジョーイの説明に、2人が納得したようにうなずく。
モンスターボールを回復装置にセットしてきたラッキーたちも、ジョーイと同じようにコロコロと笑う。
懐かしい姿に、少しだけ和んだ。
「ふふ、カントーやシンオウの子だったら、そう思っちゃうのも無理ないわね」
「え?俺たち自己紹介してませんよね?」
「あ、ごめんなさい。私、あなたたちのファンなのよ。シンオウリーグ、すごかったわ」
「ありがとうございます」
「見られてたんだ・・・。なんか、恥ずかしいなぁ・・・」
照れたように頬をかくサトシに、ジョーイが笑う。
「裏手のバトルフィールドでバトルしてたのも、あなたたちでしょう?すごい衝撃だったわ。なんだかリーグ戦の会場にいるみたいだったわ」
「あ、あの!ジョーイさん!俺・・・」
「フィールドを壊しちゃったのよね?」
「ごめんなさい・・・」
「いいのよ。その代わり、明日私ともバトルしてくれる?」
「え?」
驚きの条件に、2人がまた眼を見開く。
それからすぐに納得した。
さまざまな地方を旅していくうちに、好戦的な白衣の天使がいることは、把握済みである。そう言ったジョーイとのバトルも、経験済みだ。
「はい、もちろんです」
「よかった。明日はイッシュの子たちともバトルするんでしょう?カスミさんから聞いたわ。フィールドは明日までに直しておくから、安心してね?」
「助かります」
「いいのよ。その代わり、イッシュのトレーナーをちゃんとしつk・・・ゴホン、注意してあげてね?」
「はい、もちろんです」
すがすがしいシンジとジョーイの笑みに、サトシはまたもや遠い目をする。
どうやらイッシュのトレーナーは、白衣の天使をも敵に回していたようです。