そんなのは建前で






「やっぱ、フィールド壊しちゃったな~・・・」
「いつものことだろう」
「そうなんだけど・・・」


サトシとシンジはバトルを終え、ポケモンセンターに戻ってきていた。
久々にフィールド全壊バトルを繰り広げたサトシは、どこか遠い目をしていた。
懐かしさと、フィールドの修理費のおかげである。
しかしサトシとシンジの両名はリーグ戦やその他の大会で優秀な成績を収める猛者である。高々フィールドの修理費など安いものだ。
サトシが遠い目をしているのは、修理費を払うのが嫌なのではなく、イッシュは室内でのバトルが盛んで、壊さないようにバトルしていたため、貯金はたまる一方であった。
そのため母・ハナコに叱られることもなかったのだが、またフィールドを破壊したなどと言えば、なんと言われるかわからないが故の遠い目である。

実際は、サトシが知らないだけで、フィールドを破壊して当たり前だった息子が今回の旅ではそんなこともなくなり、元気がないのではと心配しているのだが、それは遠い故郷で息子を心配している母親しか知らない事実であった。


「あ、サトシ!シンジ!」
「カスミ」
「ちょっと~?あんたたち、久々の再会だからって、ちょっとはしゃぎすぎなんじゃないの?明日までにフィールド直るわけ?」
「明日?」


ポケモンセンターに戻ってきた2人を目ざとく見つけたカスミが、2人に駆け寄る。
そんなカスミの言葉に、サトシが首をかしげた。


「ほぉ?つまり、計画は抜かりなく進んだわけか」
「ええ、もちろんよ」
「え、ちょっ・・・、け、計画って・・・?」
「気にするな」
「そうよ、気にしなくていいわ。ただ私たちがイッシュのトレーナーと戦うだけだから」


よそ行きのさわやかな笑みを浮かべたカスミと、爛々と目を輝かせて口角を上げるシンジに、サトシの顔が引きつる。
肩に乗っているピカチュウの顔も、若干青い。


「(あいつら、大丈夫かな・・・)」


少しだけ不安を覚えたサトシだった。












(それよりシンジ、大丈夫だった?ふらついたりしてない?)
(え?シンジ、体調悪かったのか?)
(頭に怪我をしたから、たまにふらつくのよ。それで、大丈夫だったの?)
(ああ)
(ちょっとでも異変を感じたら言うのよ?)
(分かってる)
(無理はするなよ?)
(ああ)




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