そんなのは建前で
「これで全部?」
「私の記憶が正しければな・・・。いや、カビゴンがいないな」
「ああ、あの子はたいてい寝てるから」
「種族柄というやつか」
勢ぞろいしたポケモンたちを見まわし、シンジがうなずく。
その隣にはゴウカザルがおり、なでてなでてというように手に擦り寄っている。
軽く頭をなでれば、彼は嬉しそうに頬を緩めた。
自然と、シンジとカスミの頬も緩む。
しかし、シンジはすぐに表情を引き締めると、サトシのポケモンたちに向けて言った。
「さて、お前たち・・・。私たちとともにイッシュに行きたい奴はいるか?」
イッシュ、という言葉にポケモンたちは反応を示す。
イッシュにはサトシがいる。彼女たちについていけば、サトシに会える。
そうは思うのだが、行きたいと主張できない、否、してはいけないと本能が告げる。
心なしか、空気が重い。重いどころか、痛いとさえ感じるのだ。
「あいつには、この中の5体とピカチュウで、私と戦ってもらう。私に勝てる自信のある奴は前に出ろ」
シンジのいうあいつとは、誰と言われるまでもなくわかった。
行きたい、会いたい、けど何故だろう、本能が警報を鳴らす。
――っべーわ。これ、やっべーわ。あれだよ、うん。フラグってやつだよ、死亡フラグ。
怒ってるどころか殺気立ってるもの。道理で空気が痛いはずだよ。ははっ!
「私が
サトシごと蹂躙してやる」
あ、これ、詰んだわ。
そう思わずにはいられないほどのいい笑顔を浮かべていたと、のちにサトポケ達は語るのだった。