君の声が聞こえる
発電所には、緊急電気供給装置というものがあり、緊急時にポケモンから電気を供給することができるシステムになっている。
そのため、発電所は、電気タイプの多い、地盤のしっかりした土地に作ることが法律で定められていた。
「ピカチュウ、十万ボルト!」
「エレキブル、雷だ!」
「プラー!」
「マイー!」
「ぺラップ!ものまねだ!」
「コイー!」
「レアコイル!放電!」
「パチリスも放電だ!」
集まったたくさんの電気タイプの力により、装置に電気がたまっていく。
天井についている蛍光灯が、ちかちかとわずかに瞬き、ぱっと辺りを明るく照らした。
「や、やった!電気が戻ったぞ!」
「街にも明かりがついた!」
窓から外をのぞいていた職員の1人が声を上げる。
発電所の中は、歓声であふれていた。
「ありがとう!君たちには何とお礼を言ったらいいか・・・!」
「いえ、困った時はお互いさまでしょう」
「当然のことをしたまでですよ!」
「本当にありがとう・・・!」
2人の言葉に、何度も職員たちが感謝の意を述べる。
プラスルたちも、ピカチュウやエレキブルたちと手を取り合い喜びを分かち合っていた。
「君たち、旅のトレーナーだろう?」
「お礼にもならないけど、今日はここに泊って行きなさい」
「ここは職員の宿舎も兼ねているから、たくさん部屋が余っているんだ」
「いいんですか!?」
「助かります」
「レンジャーさんもどうです?今日はもう遅いですし、随分お疲れのようですよ」
「お気持ちはありがたいんですが、俺は本部への報告があるので・・・」
「そうですか・・・」
少し残念そうに笑う職員に頭を下げ、ジャッキーは出口の前に立ち、サトシ達に向き直る。
「じゃあ俺は本部に戻るよ。トラブルに巻き込まれないよう注意しろよ」
「善処します」
「じゃあ、またな!」
「ジャッキーさんもお元気で!」
「おげんきで!おげんきで!」
去っていくジャッキーの背にシンジが一礼し、サトシが大きく手を振った。
ジャッキーの姿が見えなくなるまで手を振り続けると、サトシがそっと手を降ろし、シンジへと声をかけた。
「・・・なぁ、シンジ、」
「・・・何だ」
「・・・俺たちにできることって、ないのかな・・・?」
凪いだ瞳で森を映すサトシを見て、シンジは嘆息した。
拳を作り、サトシの脳天に落とせば、サトシは痛みに悶絶する。
「~~~っ!何すんだよ!!」
「できるできないではないだろう」
「・・・!」
「やらなければ、何もできない」
「シンジ・・・」
「必ず、何かあるはずだ」
シンジはいつもと変わらない表情でそう言い放った。
しかし、その言葉には、その声には、何らかの感情が含まれており、常よりもずっと力強かった。
そんなシンジに、サトシの頬が自然とほころび、サトシは笑顔になった。
「ああ!そうだな!じゃあ早く飯食おうぜ!俺、腹減っちゃって・・・」
「ふっ・・・、お前は相変わらずだな」
それでこそサトシだ。
感情のこもっていない、凪いだ瞳なんて似合わない。
思わず口元をほころばせるシンジを見て、サトシの笑みが深まった。
自分たちを呼ぶ職員たちの声に、2人はそろって駆けだした。
そんな少年少女らの頭上では、数多の星が輝いていた。