君の声が聞こえる
「ありがとう、ジュカイン。戻ってくれ」
「エレキブル、ドンカラス、お前たちも戻れ」
ジュカイン達をボールに戻し、つかまっていたプラスル達を見る。
「みんな無事か?」
「プラッ!」
「マイー!」
元気に返事をするプラスルたちに安堵の笑みを漏らす。
「おーい、君たちー!」
「大丈夫かー!」
職員の男性たちが、サトシたちの後を追ってきたのか、こちらに向かって走った来る。
大きく振られる手に、こちらも手を振る返す。
「大丈夫です!・・・って、ジャッキーさん!?」
「ぴかっ!?」
「よう!随分早い再会だったな!」
「どうしてここに・・・」
職員たちとともに、つい先ほど別れたばかりのジャッキーが、サトシたちに駆け寄る。
彼の頭上では、ぺラップが楽しげに旋回している。
「実は君たちと別れてすぐ、発電所でポケモンたちが暴れ出したと報告が入ったんだ」
「そうだったんですか・・・」
「その割には到着が遅かったように思いますが・・・」
「おもいますが!おもいますが!」
ぺラップがジャッキーの肩にとまる。彼の顎を軽くなで、ジャッキーは苦笑した。
「あー・・・実はな、最近、密猟や虐待問題なんかが増えててな・・・。レンジャー協会だけじゃ、対処しきれなくなってきてるんだ・・・。ここに来るのが遅れたのも、他の事件と重なってしまって、他の手の空いているレンジャーを探していたからなんだ」
そう言って苦笑するジャッキーの顔には、濃い疲労の色が見える。
ジャッキーは、トップレンジャーである。その分難易度の高い仕事を任され、回ってくる仕事も多い。
暴れているポケモンをなだめるのは、実は非常に難しいことなのだ。人間とは違い、ポケモンは技が使える。人間の作りだした兵器などよりも強力で、我を忘れて技を繰り出されでもしたら、どんな被害が及ぶかもわからない。
しかし、ポケモンを刺激せずに、できるだけ被害を抑えてポケモンをなだめることができる人間など、限られてくる。とても、一般のレンジャーには任せられないことなのだ。
そんな事件が重なり、対処できる人間を探してからここに来たのだ。これでも随分と早い到着だった。
レンジャー協会とポケモンたちの現状に、サトシが顔を曇らせる。隣では、シンジも眉を寄せていた。
けれども、切り替えるようにシンジが一度目を伏せ、言った。
「暗くなっているときじゃない。今は発電所をどうにかすることを考えろ。この町にはポケモンセンターがある。重症のポケモンがいたら、死んでしまうぞ」
「そうだった・・・!」
停電が起こっている街があることを思い出し、サトシが狼狽する。
慌てるサトシに対し、シンジは努めて冷静に言った。
「発電所には、非常事態に備えてポケモンから電気を供給できる装置がありましたよね?幸いにも電気タイプたちがいます」
「俺たちが協力します!だから早く発電所を復興させましょう!」
「あ、ああ・・・!」
「しかし・・・どうして君たちがそんなことを・・・」
「「前にも似たようなことがあったからです」」
「ああ、そう・・・」
真顔で声をそろえられ、ジャッキーと発電所の職員たちが、いささか呆然とした面持ちでうなずいた。
「(もしかして、こいつらの方が俺より多忙で経験豊富なんじゃ・・・?)」
そう考えて、実際にそうでありそうだと寒気がしたので、ジャッキーは思考を打ち切り発電所へと向かって走り出した。