初恋フィルター 番外編






結婚後。


五条「椿が料理作ってるのを見るのが好きなんだよねー」
釘崎「手伝えや」
五条「いやいや、ちゃんと手伝ってるよ? たまに、完成間際に帰ったときとかに見てるんだよ」
虎杖「いいなぁって思うところがあんの?」
五条「こっそりつまみ食いしてるとことか見れるんだよ。僕が手伝ってるときはしないんだよね。僕にばっか味見させんの」
伏黒「味見は作ってる奴の特権だろ」
虎杖「それな〜」
釘崎「椿さんのことだから、こいつの味覚に合わせてんでしょ」
五条「そうだよー。僕ってば愛されてる〜!」
伏黒「話聞いて欲しいなら続きに戻れ」
五条「はいはい。それでね、こっそりつまみ食いして、たまにめちゃくちゃ美味しく出来たときなんかに僕を呼んでくれるんだよ。自分が僕に隠れてつまみ食いしてるのも忘れてさ」
釘崎「あ〜、やりそう。あの人たまに抜けてるし」
五条「そうそう。それで"美味しいね〜"って言い合ってるときになってようやく"あっ……"って顔すんの。それがかわいくてさぁ」
伏黒「まさか指摘してねぇよな???」
五条「他の奴だったらするけど、椿にはしないよ〜。"僕は何にも気付いてませんよ〜"って顔してお皿用意すんの。そんでまたやらかす」
釘崎「学習しねぇのかよ……。いや、別に問題になるような事じゃないからいいけど」
虎杖「学習しないって言うより、そのときの気持ちを優先しちゃうんじゃね? "これ、めっちゃ美味しく出来た! 早く食べて欲しい!"みたいな」
釘崎「あー……椿さんならあるわね」
五条「ねっ、かわいいでしょ?」
「「「はいはい」」」


***


椿「それで、何で喧嘩になったんだ?」
「「傑/悟が!!!」」
椿「うん? 私は言い訳をしろと言ったか? あったことをあるがままに述べよ、と言ったつもりなんだが」
「「す、すいません……」」

家入「いや、椿つっっっよ」
夜蛾「いつもこう素直だと楽なんだがな……」


***


結婚後。
コテコテなモブ令嬢とマウントバトルやって欲しかったので書いてみた。


令嬢「今すぐ悟様を解放しなさい!」
椿「…………硝子、私って悟を拘束できるような力を持っていたか?」
家入「相手するのが面倒だからってとぼけんな。あのお嬢様は"五条を自分に寄越せ"って言いたいんだろ」
令嬢「なっ!? そ、そんなはしたないことは言いませんわ! ま、まぁ? 悟様が私を見染められる可能性はありますけど?」
家入「椿が居る限りないだろうけどな」
椿「火に油なんだよな、その発言。まぁ、確かに事実ではあるけれど」
令嬢「火に油ぁ!!! ご自分で注ぐんじゃありませんわ!!!」
椿「だって彼、私がそばに居ると私以外見ないし」
家入「話するときは礼儀として顔向けるけど、意識は椿の方にいってるもんな」
椿「そんな状態の彼を間近で見ているんだ。他に目移りするところなんて想像出来ない」
令嬢「い、今はそうかもしれませんが!? 人の心は移ろうものです! あなたが悟様を解放すれば、彼はあっという間にふさわしい女性を見つけますわ! 例えば私とか!!!」
家入「願望が口に出てるんだよなぁ」
椿「というかそもそも、すぐに目移りするような人をどうして伴侶にしたいと思うのか。そんな人間、またすぐに目移りしてしまうだろうに」
令嬢「せ、正論……! し、しかし、ふさわしい女性が、きちんとした振る舞いをしていれば、殿方の心を繋ぎ止めておく事が出来るはずですわ!」
家入「それが出来てんのが椿だろ」
椿「ふふ、私に出来る努力はしているからな」
家入「いい女だろ? 私の親友だ」
椿「硝子だっていい女だよ」
令嬢「そこぉ! 私を無視して仲睦まじくしないでくださいます!!?」
家入「寝取り宣言は終わったろ? なら、もう用はないじゃん」
令嬢「ねっ……!? ち、違いますわ! 一般家庭出身の非術師の庶民では釣り合いが取れないと言っているのです! あなたでは呪術界の常識や呪術師というものを理解できないでしょう?」
椿「……そうだな。私には呪いを見ることすら出来ない」
令嬢「そうでしょう? 何ですか、ちゃんと分かっているのではありませんか」
椿「でも、悟は私にそういったことを求めてはいないようだよ。私が私で在ることが何よりだと、私の在り方を好ましく思ってくれているんだ」
令嬢「ん、んぐぅ……! し、しかし、そんなことでは悟様を理解出来ないでしょう? あなたは悟様の何を知ってるのですか?」
家入「それを嫁に訊ねる度胸は褒めてやるよ」
椿「え、何だろう。私しか知らないこと、と言うのが分からないな……」
家入「家での過ごし方とかは? そういうのはあんたが一番知ってんでしょ」
椿「そうでもないと思う。高専にいたときと変わらないんじゃないかな。この間の休日は豪雨だったから、家で過ごすことにしたんだけど、映画を見てゲームして、だらだらしてただけだし」
令嬢「さ、悟様がだらだら……!? 信じられませんわ!!!」
椿「え、こんなことで? 彼、周囲から一体どんな風に見られて……?」
家入「呪術界の一部はあいつを崇拝してんだよ。だから、俗っぽい過ごし方をしてるなんて考えてもいなかったんだろうね」
椿「なるほど。彼、意外と俗っぽいのにな」
家入「まぁな。ちなみに、その映画とゲームって?」
椿「Z級サメ映画と桃鉄」
家入「なんでwwwww もっとマシなもん観なよwwwwwww」
椿「そうだな。この間もキラート○トを観て、虚無のあまりに一周回って笑えてきてしまって、二人してソファから落ちた」
家入「何してんのwwwww 虚無のあまりに笑い出すって何wwwww」
椿「いやぁ、だって足とか見えてたし。サメ映画もぶっ飛ぶ過ぎてて、どうしてが尽きなくて……。サメが吠えたりとか」
家入「待ってwwwww サメって吠えるっけ?wwwww」
椿「もしかしたら吠えるのかもしれない。地面や空を泳げるし、頭が増えたり別の生物とくっついたりするし」
家入「結構クソ映画観てんのね」
椿「いや、悪い意味での有名どころを少し。マニアがいるくらいだから、世間の評価より面白いのかもしれない、と言う話になって。そして世間の評価は概ね正しかったな、という結論に至った」
家入「時間を無駄にしてんじゃんwwwww」
令嬢「サメが吠え……? 頭が増える???」
家入「お嬢様が困惑しちゃったな」
椿「まぁ、そういう贅沢な使い方をしているよ」
家入「他にはないの? 意外なこととか」
椿「意外なことか……。そう言えば、彼の部屋の掃除をしていたときに、綺麗な文箱を見つけたんだ。上手く蓋が閉まっていなかったから、閉め直そうと思ったんだけど、その時にちょっとだけ中身が見えてしまって……。その中身が私が書いた悟宛のメッセージだったんだ」
家入「あいつ宛にメッセージ? そんなもん書いてんの?」
椿「彼って帰宅が不規則だし、日付を越えてしまうことも多いから、私が先に寝てしまうこともあって。そう言う日に、ちょっとした一言を書いてテーブルに置いておくようにしているんだ」
家入「それでそのメモをあいつは取っておいてんのね。確かにあいつにとっては価値があるな」
令嬢「なっ……!? お、夫の帰宅を待たずに寝てしまうですって……!? 夫より先に寝てしまうなんて有り得ませんわ!!」
家入「いつの時代の人間だよ」
椿「それがまかり通っているのが呪術界だろう? 悟が“変えたい”と思うのも無理はない」
家入「アップデートしていけよな。時代に取り残されてるのに気付け~」
椿「それに、起きて待っていたこともあるけれど、眠たいのを我慢して待っている必要はないと言われてしまって……。問答無用でベッドに連れて行かれてしまった」
家入「んで寝かしつけられたんだ」
椿「元々眠たかったから、横になったらそのまま眠ってしまって。申し訳ないとは思うんだけど、私が無理をする方が嫌なのだと言われて……」
家入「いいんじゃない? あいつがそうしろって言うんだし」
令嬢「さ、悟様の優しさにつけ込んでいるだけではありませんか! やはりあなたは悟様に相応しくありませんわ!!!」
椿「…………君は私が彼に相応しくないと言うけれど、私を選んだのは彼だ。私を否定すると言うことは、同時に彼への否定となる。そのことについてはどう考えている?」
令嬢「そ、それはあなたが悟様を誑かし、誤った道へと進ませたのです! 全てあなたが悪いのですわ!」
家入「五条が勝手に誑かされただけだろ。むしろ間違った道へ行こうもんなら、問答無用でぶん殴りそうな女だぞ?」
椿「話くらいは聞くさ」
家入「返答次第では容赦しねぇ宣言にしか聞こえねぇな」
令嬢「ぼ、暴力に訴えるような女性だなんて……! やはり悟様に相応しくありません! これからは私が彼を支えていきます! 今すぐ正妻の地位を退きなさい!」
家入「正妻wwwww あいつに妾なんていねぇよwwwwwww」
椿「…………意味が分からないな。悟が望んだことでもあるまい、他人に口を出されるようなことではないと判断する」
令嬢「悟様もきっと、あなたのような人間ではなく、家柄もしっかりとした、呪術に理解のある女性を望んでいるはず! だから私が………!」
椿「君は同じ事ばかりを繰り返すな。それに、君の言うような器量よしのお嬢さん方はいままで何人も現れたけれど、誰一人として彼のお眼鏡に適うことはなかったんだ。それが答えだろう?」
令嬢「んぐ……っ」
椿「そも、君は私より彼を愛し、私より彼に愛される存在になれるのか? 私を超えられるという自信と根拠はあるか?」
令嬢「んぐ、ぐううううう……!」
椿「さて、何か反論はあるかな? お嬢ちゃん?」
令嬢「うううううううううう!!!」
椿「ないならば、諦めて引き下がるべきだ。引き際を見極めるのは大切なことだよ」
令嬢「お、覚えていらっしゃい!!!」

椿「テンプレみたいなお嬢さんだったな」
家入「確かに。どっかに指南書でもあんのかね」
椿「あったら見てみたいな」
家入「頭おかしくなりそう。てか、あんたの語彙に"お嬢ちゃん"なんてあったんだ?」
椿「折角の硝子との休日だったのに邪魔されたのに、流石に腹が立ってしまって……。それに、私だって何度も不釣り合いだと罵られれば傷付くさ。でも、少し言い過ぎたかな?」
家入「いや、別に? もっと言ってやって良かったと思うよ。別に暴言を吐いてた訳でもないんだし」
椿「そうか?」
家入「とりあえず、このことは五条に報告しておくから」
椿「えっ」
家入「報告しておくからな」
椿「じ、自分で……」
家入「あんたはこういうとき、肝心なことを言わないからな。私から伝えておくよ。いいね?」
椿「…………はい、よろしくお願いします」
家入「よろしい」


マウントバトルなんて高度なものが書けるわけがなかった。
同窓会ネタとか書きたい。よくあるやつ。


***


椿「君にとって私を愛するのって当たり前なんだな」


***


学生時代。


椿「そう言えば今日、クラスの女子達で腕相撲大会が開かれたんだ」
家入「何で???」
夏油「どんな流れでそんなことに?」
五条「普通の学校ではよくある事なの……?」
椿「さぁ……。私は途中参加だから、詳しい経緯は知らないんだ。でも私はその、小柄な女子とは上手く組めなくて、結局レフェリー役で終わってしまったんだよな」
夏油「あー……。確かに腕が倒れた状態だとフェアじゃないしね」
家入「そんな違うもん? ちょっと私と組んでみてよ」
椿「いいよ」
家入「あ、本当だ。これは確かにフェアじゃないわ」
椿「硝子ならまだマシな方かな。もっと小柄な子も居るし」
家入「それ、腕がほぼ倒れてない?」
椿「一番小柄な子との身長差を教えてあげようか。なんと30cm差だ」
夏油「マジか」
五条「ちっさ……」
家入「椿の胸くらいまでしかないんじゃない?」
椿「確かにそれくらいかな。その子と話すときはお互いに大変だよ」
家入「だろうなぁ」


ちなみに椿は最終的に180cmになる。
現在は175cmくらい。


***


釘崎「ねぇ、伏黒。椿さん知らない?」
伏黒「ちょっと待て。…………居た。あそこだ」
釘崎「え、本当に居た……。どうやって見つけたわけ?」
伏黒「その場に五条先生が居るって分かってるなら、まず五条先生を探せ。大抵あの人の隣か視線の先に居るから」
釘崎「なるほどね。今度からそうするわ」


***


結婚後。


椿「死ぬときは一人、か。さみしがり屋のくせに、随分と寂しいことを言うじゃないか」
五条「椿……」
椿「君、一人で死ねるのか?」
五条「……死ねるよ。呪術師はみんなそうなんだから」
椿「…………私は、君がそれを望むなら、共に死ぬ覚悟くらい、とうの昔に出来ている」
五条「…………えっ?」
椿「君が死ぬとき、私を呪ってくれないか」
五条「な、何言って………」
椿「私が死ぬとき、私は私を呪うから」
五条「…………そこは僕を呪ってよ」
椿「君は最強の術師だ。夢もある。君を共に連れて行くわけにはいかない。だから、私は私を呪うんだ」
五条「…………椿は、僕が死ぬとき、連れて行きたいって言ったら、ついてきてくれるの?」
椿「構わないよ。そこが地獄であろうとも、君が隣に居てくれるなら」
五条「そっか……」




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